日本製鉄が提供する電気めっき鋼板「FeLuce(フェルーチェ)」の採用が広がっている。同社は、ものづくり技術の展示会「付加価値ある意匠デザインを実現するものづくり技術2022」(主催:日経ものづくり、2022年6月9日)にFeLuceを出展し、電機メーカーのアクア(東京・中央)が発売予定のコインランドリー用機器での採用例などをアピールした。
FeLuceは、ヘアライン調の加飾を施した電気亜鉛ニッケルめっき鋼板。めっき層に研削ブラシでヘアライン加工を施し、その上に樹脂コートを載せた3層構造となっている。現在、ブラックとシルバーの2色を提供している。一般にヘアライン加工はステンレス鋼やアルミニウム合金などの表面に施されるが、FeLuceは鋼板なので低価格。絞りや曲げの加工が可能で、後工程での塗装が不要なのも利点という。
昨今の素材高騰でステンレス鋼などの価格が上昇しているのを背景に、ヘアラインによる高級感を低コストで実現できるとして家電メーカーや家具メーカーなどからの問い合わせが増えているという。アクアも、上質感を演出できるとして「AQUA」ブランドで展開する全自動洗濯乾燥機の新製品の外装材にFeLuceを採用した。当該製品は2022年6月に発売予定という。
光触媒被膜で抗ウイルス鋼板
日本製鉄は、光触媒機能を付加した「抗ウイルス鋼板」の商品化についても明らかにした。酸化チタンの光触媒被膜を施したもので、「開発は終了して商品化の検討段階にある」(同社)。光触媒の抗ウイルス性能試験を定めた「JIS R1756」に準拠した試験でウイルスを99%以上抑制する性能を確認しているという。詳細は明かさないが光触媒の工夫により、500lx程度の低照度環境下でも効果を得られるようにしている。FeLuceの他、プレコート鋼板や溶融亜鉛めっき鋼板などへの適用を想定している。
日本製鉄がFeLuceや抗ウイルス鋼板などを開発した背景には、汎用のめっき鋼板では中国などとの海外メーカーの価格競争に勝てないとの危機感がある。そこで、表面に加工を施して高付加価値化を図っているのだ。「新型コロナ禍の前からさまざまな取り組みを進めてきた。抗ウイルス鋼板もその1つ」(同社)という。