NTNは、内蔵したセンサーと発電ユニット、無線デバイスによって温度・振動・回転速度の情報を自動で送信する軸受(ベアリング)「しゃべる軸受」を開発した(図1)。外付けしたセンサーを利用するのに比べて高い感度で状態を把握し、早期に異常を検知できるという。モーターやブロワーなど、産業機械全般での使用を想定している。

図1 「しゃべる軸受」の外観(左)と構造(右)
図1 「しゃべる軸受」の外観(左)と構造(右)
外観はサンプルで、実際の製品では電子回路基盤を保護材で覆う。(出所:NTN)
[画像のクリックで拡大表示]
* NTNのニュースリリース: https://www.ntn.co.jp/japan/news/new_products/news202200041.html

 開発品は、軸受の回転に伴って発生する電力でセンサーと無線デバイスを動作させ、センシングした情報を自動で無線送信する(図2)。その情報をデータロガーに保存してタブレットやパソコンで読み取れる他、タブレット端末やパソコンで直接受信して、状態監視の履歴やアラームを表示させるなどして機器をIoT(Internet of Things)化できる。

図2 使用イメージ
図2 使用イメージ
設備・装置で使用している軸受を開発品に置き換えて使用できる。(出所:NTN)
[画像のクリックで拡大表示]

 標準の転がり軸受の寸法や負荷容量を変えずに、センサー・発電ユニット・無線デバイスを搭載しており、既存の軸受からの置き換えが可能。電源供給やデータ送信のためのケーブルが要らず、機械装置への実装が容易なのも利点とする。

 同社は今後、開発品のテストマーケティングを通して具体的なニーズの探索と市場への提案を進める。まずは、生産設備で多く使われている深溝玉軸受を製品化し、その後、適用する軸受の種類や品番などを段階的に拡大する予定だ。開発品の提供を通じて高度な状態監視の実現を支援するとともに、適切な交換時期を通知するといった状態監視サービスも展開し、サービス・ソリューション事業の強化と、それに連動した補修軸受の販売拡大につなげる。

 軸受のセンシングに関する取り組みとして同社は、2014~18年に、大型風力発電用軸受の状態監視・データ解析で新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のプロジェクトに参画。その成果を基に、大型風力発電装置の異常兆候を検出する状態監視システム(Condition Monitoring System:CMS)を提供している。その他には、工作機械の主軸を対象に「センサ内蔵軸受ユニット」「産業用IoTプラットフォーム向け軸受診断アプリ」「NTNポータブル異常検知装置」などを提供しており、これらの開発を通して、軸受の状態監視に必要なセンサーの選択や解析ソフトの最適化などの技術を高めてきたという。

* 2019年1月24日付、NTNのニュースリリース: https://www.ntn.co.jp/japan/news/press/news201800120.html * 2020年5月25日付、NTNのニュースリリース: https://www.ntn.co.jp/japan/news/new_products/news202000025.html