PR

 「600kmも1000kmも走る電気自動車(EV)を誰が買うのか。1日で100km程度走れれば十分だ」――。日本電産会長の永守重信氏が、EVにおける航続距離の競争や、それに伴いEVの価格が高くなっていることに苦言を呈した(図1)。同社が2022年6月17日に開いた株主総会で発言した(図2)。

図1 日本電産会長の永守重信氏
図1 日本電産会長の永守重信氏
写真は同社が株主総会後に開いた記者会見の様子。(写真:日経クロステック)
[画像のクリックで拡大表示]
図2 日本電産は京都市内で株主総会を開催した
図2 日本電産は京都市内で株主総会を開催した
(写真;日経クロステック)
[画像のクリックで拡大表示]

 現在、世界の主要自動車メーカーが販売する量産EVは、大容量のリチウムイオン電池を搭載し、長距離走行に耐えうる航続距離を確保しているのが主流だ。EVでは電池が車両コストの3~4割を占めるとされ、電池容量の増加は価格上昇に直結する。

 永守氏は「車両価格は200万~300万円でも高い」と主張する。中国・上汽通用五菱汽車が同国で約50万円で販売し、大ヒットした格安EV「宏光MINI EV」を例に挙げ「EVは安く造れる」(同氏)と強調した。

 日本電産社長の関潤氏は「金銭的に余裕があるユーザーは、充電などの不便さを嫌がる。今は、自動車メーカーがこうしたユーザーに向けてEVを造っているから、価格が高い」と分析する(図3)。そのうえで、関氏は「日常的なクルマ使いにおいて、9割以上のユーザーの平均運転距離が30km未満」とのデータを示し、今後は「航続距離が短くても、価格の安いEVを欲しがるユーザーが出てくる」と見通しを語った。

図3 日本電産社長の関潤氏
図3 日本電産社長の関潤氏
(写真:日経クロステック)
[画像のクリックで拡大表示]

 日本市場では、日産自動車と三菱自動車が2022年6月16日に軽自動車タイプのEVを発売したばかり。両社ともに販売計画を上回る受注を獲得し、好調な滑り出しを見せている。同EVは国の補助金(55万円)を利用すると、200万円以下から購入できる。