ソニーセミコンダクタソリューションズは2022年6月17日、エッジAI(人工知能)センシングプラットフォーム(基盤)「AITRIOS(アイトリオス)」のデモを報道機関向けに初めて公開した(図1)。同日開催したイメージセンサー事業の説明会で小売業界向けに提案したもので、複数のカメラから商品の販売状況や来店客の情報を把握し、補充タイミングや在庫の管理、顧客属性に合わせた商品提案などに利用できる。アプリケーションで機能を追加するなど、リカーリング型の事業モデルの展開も想定する。
ソニーセミコンダクタが紹介したデモの内容は、AI機能を持つイメージセンサー「IMX500」を搭載したカメラで商品の在庫や客の属性情報などを分析するというものだった(図2)。例えば、「30代ぐらいの女性客がスナック菓子を3箱手に取った」といったように顧客の属性と商品をひも付けて、販売情報を蓄積できる。商品が欠品すれば店舗スタッフの携帯電話にアラートメールを送信するといった使い方もでき、スタッフの負担低減や省人化に役立つ(図3)。
映像データはイメージセンサーのエッジAIでテキストデータに変換するため、クラウドやサーバーへ送信するときの通信量を減らせ、個人情報の漏えい防止にもなる(図4)。個人情報保護の規制が厳しい欧州市場でもサービスの普及が期待できる。
顧客の属性や天候などのデータに基づいた予測分析にも期待をかける。例えば「主婦層の来店が夕方に増えるので食品の陳列を増やそう」といったように、顧客の属性に応じた商品の陳列を調節できる。天気と商品の販売実績データを組み合わせれば、天気予報に応じて売れやすい商品を提案して売り上げ増にも役立ちそうだ(図5)。
AITRIOSは、あたかもスマートフォンのアプリストアのように、各種機能を手軽に追加できるのも特徴だ(図6)。利用店舗は利便性が高まり、ソニーも定額サービスで安定した収益が得られることになる。プラットフォームには第三者としてアプリ開発者やシステムインテグレーターも参加できる。サービスの迅速な市場投入や開発費の低減を訴求する。例えば、「システムに顧客のモニタリングも追加したい」といった場合は、サードパーティーが開発したアプリを選んで機能を追加できるといった具合だ。2021年10月の発表以降、日本や米国、欧州で導入に向けた検討が進んでいるという。