OKIは2022年6月21日、DX(デジタルトランスフォーメーション)に関して自社内の改革能力強化と、社外に対するソリューション提供強化を一括して推進する「『社会の大丈夫をつくっていく』DX新戦略」(同社)を発表した。短期間で改革の試行と改良を繰り返すアジャイル型のアプローチを社内に導入して能力を育成するとともに、社外への提案に適用する。DX関連の売り上げ増加を目指すにあたって「ソリューション提供部門に限らず、社内のさまざまな部門を関係させて進めていく」(OKI専務執行役員でデジタル責任者の坪井正志氏)考えだ。

 これまで同社は、デジタル技術を応用して社内業務を改革する試みが、外部へ供給できる製品になった経験を持つ。例えば富岡工場で実用化した、機器組み立て工程の作業支援システム「プロジェクションアッセンブリーシステム」は、自動車部品メーカーなどで検査用システムとして使われている(図1)。「まさかと思うようなところで売れた。ただし社内向けシステムがそのまま社外で使えるわけではなく、商品化に当たって一度作り直しており、そのような『外部化』を強化していきたい」(坪井氏)としている。

図1 OKIのショールームにある「プロジェクションアッセンブリーシステム」の展示
図1 OKIのショールームにある「プロジェクションアッセンブリーシステム」の展示
富岡工場の製品組み立て工程支援が出発点だったシステム。(写真:日経クロステック)
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 プロジェクションアッセンブリーシステムが既存の業務を改善する取り組みなのに対して、従来にないアイデアによる事業創造、といった先端的なDXもある。OKIはクルマ、搬送車、移動ロボットなどの移動体の周囲にカメラを複数付けて周囲360°を撮影し、これらの画像の合成により移動体を俯瞰(ふかん)する視点の画像がリアルタイムで得られる「フライングビュー」の開発と応用を進めている(図2)。28件もの案件で顧客企業と共同でPoC(概念検証)を実施し、一部で実用化を実現した。この過程は、短期間で試行と改良を繰り返すアジャイル型のアプローチで進めた。

図2 OKIのショールームにある「フライングビュー」のデモシステム
図2 OKIのショールームにある「フライングビュー」のデモシステム
コックピットからロボットを操作する際、ロボットを上から俯瞰して見る画像で客観的に状況を把握できる。ただし元の画像はロボットが自らのカメラで撮影したもの。(写真:日経クロステック)
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 このような仮説の設定と検証を短期間に繰り返してイノベーションを進める過程「イノベーションマネジメントプロセス(IMS)」にはISO(国際標準化団体)の標準「ISO56002」があり、「OKIはISO56002の社内展開を図っている」(坪井氏)。社内の問題解決にIMSを適用して実力を向上し、顧客の業務に対しても仮説をもって問題解決法を提案できるようにする考え。実現のめどが立った案件については、ハードやシステムを従来通りのウォーターフォール型アプローチによる標準「ISO9001」に準拠した形で概要から細部へと順を追って開発し、品質を担保する。

 従来にないアイデアによる事業創造に「アジャイル型アプローチが重要なのは、DXでの課題設定は簡単ではないため」(OKI執行役員イノベーション責任者兼技術責任者の藤原雄彦氏)。DXではしばしば、経営者が単に「DXを推進せよ」という指示を担当者に出し、担当者が無理に課題をひねり出す結果、PoC以降の実用化がなかなか進まない、といわれる。DXのソリューションを提供する側が顧客の言う通りにするだけでは、顧客による課題設定が的を射ていなければPoCよりも先には進めない。的確に課題を見つけ出すには、顧客と対等な立場で仮設立案と検証を素早く繰り返す必要があり、ソリューション提供側としてのOKIにそのようなアジャイル型アプローチの能力が必要になる。その能力はOKI社内のイノベーションにも必要であり、社内での実践が社外への提供にも役立つ、と考える。

 同社は新戦略の策定に当たって、DXを「社内向けか社外向けか」「効率化か事業創造か」の2軸でDXを4象限に分けて説明した(図3)。

図3 DXの4象限
図3 DXの4象限
左半分が社内の実践、右半分が社外へのソリューション提供を示す。上半分は従来にない事業創造のような先端的な試み、下半分は既存業務の効率化や品質向上を示す。(出所:OKI)
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 4象限のうち「新ソリューション創出」「既存ソリューション強化」の2つは社外への提供、「組織の変革」「業務プロセスの変革」の2つは社内の改革の工夫を示す。ただしそれぞれを別の部門が担うとは限らず「さまざまな部門にそれぞれ4象限がある。この4つを分けるよりも、全体で考えるのが大事」(坪井氏)としている。