東北電力とトッパン・フォームズは、電気回路の配線をプリントで形成するプリンテッドエレクトロニクス(印刷配線)とRFID技術を組み合わせた液漏れ検知システムを開発し、2022年6月から実証実験を実施する(図1)。同システムを配管監視業務に採用し、目視では確認しにくい場所で発生した液漏れの早期発見や、作業品質の均一化を図る。

図1 液漏れ検知システムの配管への設置イメージ
図1 液漏れ検知システムの配管への設置イメージ
(出所:東北電力、トッパン・フォームズ)
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* 東北電力とトッパン・フォームズのニュースリリース: https://www.tohoku-epco.co.jp/news/normal/1228194_2558.html

 新システムでは、特殊インクで印刷した電気回路を検知部として、そこにICタグを接続する(図2)。電気回路に油や水、水性薬品などが付着して通電状況が変わると、ICタグがその変化を感知する。RFIDリーダーでICタグのID情報と検知部の通電状況を取得すると、液漏れの有無が分かるという仕組みだ。

図2 液漏れ検知システムの構成
図2 液漏れ検知システムの構成
(出所:東北電力、トッパン・フォームズ)
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 配管を覆う外装板と、配管を覆う保護材の間に検知システムを設置できるため、液漏れ量が少ない段階での発見が可能になる。作業員が目で確認する従来の配管監視業務では、外装板から液体が染み出た状態にならなければ発見が難しかったという。さらに新システムは、遠距離からの読み取りが可能。従来は作業員の目が届きにくかった箇所も点検しやすくなる。

 設置したICタグはリーダーからの電波で動作するので、電源を確保したり電池を交換したりする手間がかからない。そのため、電源の確保が必要な従来のシステムは設置が難しかった場所でも使える。その他、金属配線で検知回路を作成するシステムに比べて原材料が少なく、安価かつ大量に製作できるのも利点としている。

 両社は、東北電力の新仙台火力発電所(仙台市)に新システムを導入し、実証実験を実施する。そこで得られた知見や課題などを踏まえて、システムの機能拡張を進める。将来は、他の発電所をはじめ、石油化学や製薬といった多くの配管を利用する業種への販売を目指すという。