中国CATL(寧徳時代)は2022年6月23日、同社として第3世代となる車載用電池パックの新設計「CTP(Cell To Package)3.0」と、それをNMC(Ni-Mn-Co)系電池に用いた電池パック「麒麟(Qilin)電池」を正式発表した。主に冷却システムを最適化したことで電池本来の体積を6%増加させ、電池パックとしての重量エネルギー密度を最大255Wh/kgに高めたとする。これは現行の車載用電池パックとしては世界最高水準。また、冷却を強化したことで急速充電性能が向上し、10分で充電率80%の充電が可能になったとする。同社はこの電池パックを2023年に量産出荷する予定だ。

CATLが「麒麟電池」を発表
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CATLが「麒麟電池」を発表
(写真:CATLが公開した動画から日経クロステックがキャプチャー)

冷却システムの体積を圧縮するも性能は向上

 米Tesla(テスラ)の電気自動車(EV)に使われている電池セルの重量エネルギー密度は270Wh/kgを超えているとみられるが、電池セルをモジュール化し、さらに電池パックにした後は、体積エネルギー密度がその6割超に低下してしまう。これは、モジュールや電池パックの筐体(きょうたい)、そして冷却システムの体積が必要になるからである。

体積利用率(電池パックの体積に対する電池セルの体積)72%を実現
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体積利用率(電池パックの体積に対する電池セルの体積)72%を実現
(写真:CATLの公開動画から日経クロステックがキャプチャー)

 CATLは2019年以降、モジュールの筐体を省いた電池パックの再設計を繰り返しており、今回のCTP3.0が3世代めにあたる。新設計の最大のポイントは冷却システムを最適化したことで、同システムの体積を大幅に低減する一方で、その表面積は4倍に高めたとする。冷却能力はテスラが導入予定の4680電池の電池パックの1.5倍であるという。

(a)電池セル共通の冷却層
(a)電池セル共通の冷却層
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(b)電池セル間の冷却層
(b)電池セル間の冷却層
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電池セルの下面とセル間に薄い冷却層を用意
CTP3.0の冷却システムの概要。電池セルの下面を共通の冷却層(a)とし、さらに電池セル間にも薄い冷却層(b)を設けた(写真:CATLの公開動画から日経クロステックがキャプチャー)
冷却システムの表面積は従来の4倍に
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冷却システムの表面積は従来の4倍に
(写真:CATLの公開動画から日経クロステックがキャプチャー)

 結果、電池セルの体積エネルギー密度に対する電池パックのそれは72%と、他の多くのEV向け電池パックを上回った。冷却性能が向上したことで出力は4680電池に比べて13%向上。4C(15分でほぼ満充電)での充電が可能で、充電率が10%の電池を同80%に充電するのに要する時間は10分だという。

 麒麟電池の体積エネルギー密度は未公表だが、重量エネルギー密度はNMC系電池(麒麟電池)の場合で255Wh/kg、リン酸鉄リチウム(LFP)系電池の場合で160Wh/kgと、これまでのセル並みの値を電池パックで実現できたとする。麒麟電池を利用したEVの航続距離は1000km超を期待できるという。