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 理化学研究所などは2022年6月27日、生命科学実験ロボット「まほろ」とAI(人工知能)を用いて、iPS細胞(人工多能性幹細胞)を網膜色素上皮細胞に分化誘導する条件の探索に成功したと発表した。iPS細胞の分化誘導は再生医療において重要な工程だが、熟練の研究者でなければ高品質な細胞を培養できない。ロボットとAIで培養時の試薬濃度や細胞を取り扱う強度などを自律的に探索することで、熟練者の「匠の技」を広く共有できる。

汎用ヒト型ロボットLabDroid「まほろ」
汎用ヒト型ロボットLabDroid「まほろ」
(撮影:日経クロステック)
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 まほろは2本のアームを持つロボットで、人間と同じ実験器具を使って細胞培養ができる。細胞培養ロボットの多くは細胞の大量製造を目指しており、培養条件を細かく設定し探索することには向かなかった。今回は48セットの実験条件を設定し、人間では試薬の入れ間違いなどミスが起こりやすい複数条件の探索を可能にした。

 研究グループは、今後の展開として「ロボットクラウドバイオロジー構想」を掲げる。まほろを含めた実験ロボットの集約拠点をつくり、研究者が研究所に行かなくても自分の実験アイデアをロボットで試せるシステムの構築を目指す。理化学研究所生命機能科学研究センターバイオコンピューティング研究チームの高橋恒一チームリーダーは「生命科学の研究では、著者以外が論文を再現した実験をするのが難しいことが課題だ。ロボットとAIを活用して実験方法を共有することで、生命科学研究はより加速する」とした。