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 AGCは車載LiDAR(レーザーレーダー)用のカバーガラスを開発した(図1)。同社の欧州法人で自動車用ガラス事業を手掛けるベルギーAGC Automotive Europe(AGCオートモーティブ・ヨーロッパ)を通じ、あるLiDARメーカーへの採用が決まったようだ。硬度の高さやレーザー光の透過性などを訴求し、従来の車載LiDARで使われている樹脂製のカバーに対抗する。2022年内の量産を目指す。

図1 AGCが展示した車載LiDAR用カバーガラス
図1 AGCが展示した車載LiDAR用カバーガラス
可視光を遮断し、意匠性を高めるために、黒色の塗装を施したもの。LiDARメーカーへの採用が決まったのは、展示品の前世代品とみられる(写真:日経クロステック)
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 AGCは「人とくるまのテクノロジー展2022 NAGOYA」(2022年6月29日~7月1日、ポートメッセなごや)で、LiDAR向けに提案する製品群を公開した。その1つが同カバーガラスである(図2)。車載LiDARのカバーには、LiDAR筐体(きょうたい)内の部品・部材を保護したり、レーザー光を透過しやすくしたりすることなどが求められる。同社のガラス製のカバーは、こうした点で樹脂製のカバーを上回るという。

図2 LiDARにおけるカバーガラスの搭載位置
図2 LiDARにおけるカバーガラスの搭載位置
カバーガラスはLiDARの筐体(きょうたい)に使われる。AGCはカバーガラスのほか、レンズやフィルターなどのLiDAR部品も手掛ける。(出所:AGC)
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 今回開発したカバーガラスでは、汎用(はんよう)品に比べて硬度の高いガラスを使っている。飛び石が当たっても「傷がつきにくい」(同社の担当者)という(図3)。車載LiDARでは、カバーに傷がつくと、その部分では検知ができなくなる。樹脂製カバーは傷がつきやすく、その点を気にするLiDARメーカーからの引き合いが特に多いという。

図3 飛び石試験の結果
図3 飛び石試験の結果
試験片のガラスに石をぶつけて衝撃を模擬する試験である。上がAGCのLiDAR用カバーガラス。試験映像では、一般的なカバーガラスが割れたのに対し、同社のカバーガラスは石を跳ね返し、試験後も傷が見られなかった。同試験は「ISO 20567-1」に準拠する。(出所:AGCの資料を日経クロステックが撮影)
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 レーザー光の透過性でも、ガラスが優れる。一般的に、樹脂製カバーはレーザー光の一部を吸収してしまうが、ガラスは透過率が高い(図4)。LiDARにおけるレーザー光の波長は905nmや940nm、1550nmが多いが、AGCはいずれの波長にも対応できるという。

図4 AGCのカバーガラスにおける透過率と波長の関係
図4 AGCのカバーガラスにおける透過率と波長の関係
レーザー光の波長が1550nmである場合の設計例。縦軸が透過率で、横軸が波長。波長が1550nmのレーザー光は、ほぼ100%透過することが分かる。黒色の塗装により、波長が400~800nm程度の可視光はほぼ通さない。(出所:AGCの資料を日経クロステックが撮影)
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 このほか、同カバーガラスは耐熱性にも優れるため、融雪・霜取り用ヒーターの装着も可能だ。LiDARを含め、自動運転や先進運転支援システム(ADAS)に使うセンサーには、天候に左右されない検知機能の作動が求められる。樹脂製カバーの場合、ヒーターの熱や振動によって変形する場合があるので、ヒーターの装着は難しいという。

 課題はコストだ。現状では樹脂製カバーの方が安い。ガラスは樹脂に比べて加工性が悪く、コスト高の要因になっているという。軽量性でも樹脂に分がある。AGCがこれらを克服し、同カバーガラスの普及が進めば、LiDARのロバスト性の向上につながりそうだ。