ドイツVolkswagen(フォルクスワーゲン、VW)は2022年7月7日(現地時間)、VWグループの電池セル事業を担当する新会社「PowerCo(パワーコー)」を設立すると発表した。2030年までに200億ユーロ(138円/ユーロ換算で約2兆7600億円)以上を投じ、200億ユーロを超える年間売上高を目指す。同日開催したドイツ・ザルツギッターに建設する電池工場「SalzGiga(ザルツギガ)」の起工式で明らかにした(図1)。
VWは電池セルに関連する全ての事業を新会社に集約することで、電気自動車(EV)の競争力を高める考えだ。新会社はザルツギッターを拠点に、電池セルの技術開発や生産のほか、原料の採掘やリサイクルなどを垂直統合で手掛ける。同社社長のHerbert Diess(ヘルベルト・ディース)氏は「EV化に伴い、電池がクルマの価値を決めるようになる。我々が電池メーカーになることで、電池に関する戦略をよりコントロールしやすくしたい」と狙いを語る(図2)。
ザルツギッターの新工場は2025年に稼働を始め、VWグループの量販車セグメントに搭載する電池セルを生産する。年間生産能力は40GWhで、約50万台のEVに対応できるとしている。
生産するのは「Unified Cell(ユニファイドセル)」と呼ぶ、VWによる独自規格の角型電池セルである。同社はかねてより、形状などを共通化した同セルを2030年までにVWグループ全体の80%のEVに採用する方針を示している。量産効果などにより、電池のコストを従来に比べて最大50%削減できるとする。ディース氏は「競合他社よりもコスト効率が良い」と強調する。
VWは2030年に世界販売台数の5割をEVにする目標を掲げている。例年の販売台数を基にすると、500万台前後に相当する。電池の確保へ向け、同年までに欧州全域で6カ所の電池セル工場を建設する計画だ。スウェーデンNorthvolt(ノースボルト)など出資先の電池メーカーとも協力し、欧州では合計240GWhの年間生産能力を確保する。