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 産業ドローンを開発するACSLは2022年7月13日、小型の空撮ドローン「SOTEN(蒼天)」のユーザーに通達していた運用制限を解除したと発表した。同社は2022年4月に発生したSOTENのユーザーでの1件の墜落事故を受けて、同年6月13日からユーザーに対して運用の制限について通達を出していた。機体を制御するファームウエアをアップデートすることで不具合を解消したという。

ACSLの小型空撮ドローン「SOTEN(蒼天)」
ACSLの小型空撮ドローン「SOTEN(蒼天)」
2022年3月末までに475台を出荷。4月にあるユーザーが操縦中に墜落事故が発生した(写真:ACSL)
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 SOTENは新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が2020年4月から2021年11月まで開発を進めた「安全安心なドローン基盤技術開発」事業の成果を生かした製品である。災害対応やインフラ点検といった政府調達などに向ける。飛行・撮影データの漏洩(ろうえい)や抜き取りの防止、機体の乗っ取りへの耐性を実現した“安全安心な国産ドローン”である。ACSLは2022年3月に出荷を開始し、官公庁や民間企業などに3月末までに475台を出荷したという。

 4月の墜落事故は、回転するプロペラにローターガードを取り付けて操縦をしている際に起きたという。ローターガードは、プロペラが人や物に直接当たらないように周囲を保護する目的で取り付ける。一般にドローンでは、ローターガードのようなペイロードを載せると、重量が重くなるうえ、ローターガードで風受け面積が大きくなるため空力特性が悪化する。それによって機体に負荷がかかりやすくなる。

SOTENにローターガードを取り付けたときの様子
SOTENにローターガードを取り付けたときの様子
ローターガードは、回転するプロペラが直接当たらないように周囲を保護する部品。これを取り付けると機体に対する負荷が高くなる。その状態で負荷が高い操縦をしたのが今回の墜落の原因という(写真:ACSL)
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 同社によれば「ローターガードを取り付けた状態でドローンを上昇させながら水平移動をするような負荷が高い操作をしたり、進行方向などから風を受けてさらに負荷がかかったりして機体の制御が不能になったようだ」(ACSL CMO(最高マーケティング責任者)の六門 直哉氏)と分析している。テスト段階ではそうした状況になることはなく、取扱説明書にも記載していなかったという。

 運用制限の内容について詳細は明かせないとしているが、ローターガードを取り付ける際は負荷の高い操縦をしないように要請していた模様だ。

 同社はこの不具合を解消するために、機体を制御するファームウエアをアップデートし、同年7月13日に提供を開始した。具体的には、モーターの回転数をモニタリングし、回転数が上がって負荷が高くなっているときは機体を減速する。さらに、減速しても風が強く吹いているなどして、まだ負荷が高いと判断したら空中で停止(ホバリング)し、その間に操縦者に警告を出して次の操作を判断してもらう。このような制御を自動でできるようにしたという。

 六門氏は今回の事故の教訓として、「これまでにもさまざまなテストをしてきたが、ユースケースを想定してもっと使い倒す必要がある。さらに論理的に故障を予見できるFMEA(潜在的故障モード影響解析:Failure Mode and Effects Analysis)などにも取り組んでいきたい。日本のユーザーからのフィードバックをすぐに改善に反映できる国産ドローンの強みを生かしていきたい」と話す。