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 牧野フライス製作所は2022年7月21日、超短パルスレーザー加工機「LUMINIZER(ルミナイザー) LF400」を発売した。フェムト(1×10 -15)秒レーザーを採用し、µmオーダーの微小形状の加工を可能にした。半導体製造装置や医療機器分野などの部品の加工用途を想定する。価格は装置構成によって異なるが、「1台当たりおおむね1億円以上」(同社)。年間10台の販売を目指す。

LUMINIZER LF400
LUMINIZER LF400
超短パルスレーザー加工機。最大ワークサイズは幅450×奥行き450×高さ200mm。(写真:日経クロステック)
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 フェムト秒レーザーは照射時間が短く、一般的な短パルスレーザーよりも熱拡散を抑えられる。そのため、照射部分の変質やクラック(亀裂)を低減できる。新しい加工機は、ガルバノスキャナーでレーザーの照射を制御する方式を採用。用途に応じて2軸もしくは5軸のガルバノスキャナーを選べる他、赤外レーザーか緑色レーザーの発振器も選択できる。

 切削加工や放電加工では扱いにくいセラミックス材料や金型用鉄鋼材料の微小加工に向く。説明会では、微小なハニカム溝が連続した製品を加工サンプルとして展示した。2軸のガルバノスキャナーを用い、金型用鉄鋼材料「STAVAX」や、炭化ケイ素(SiC)などの材料サンプルの表面に、1辺の長さ1mm、深さ0.2mm、壁厚30µmのハニカム溝を形成できた。

ハニカム溝の加工サンプル
ハニカム溝の加工サンプル
LUMINIZER LF400で加工した。1辺の長さ1mm、深さ0.2mm、壁厚30µm。(写真:日経クロステック)
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 レーザー加工機では一般に、発振器が出力したレーザー光をレンズで集光して利用するため、加工断面には若干のテーパー(傾斜)が生じる。実際、「2軸のガルバノスキャナーを用いたハニカム溝の場合、壁断面には約9度のテーパーが付いている」(同社)。これに対し、5軸のガルバノスキャナーを選択すれば、レーザーの光軸に傾斜を付けられるため、より鉛直な断面を得ることが可能になるという。

 牧野フライス製作所は2020年11月にレーザー加工機事業に参入した。新しい加工機は、同社にとって第2弾のレーザー加工機となる。参入当初に発売した「LUMINIZER LB300」と「同 LB500」の2機種は、純水の細い水流で導いたレーザー光を用いてワークを加工する方式だった。スイスSynova(シノバ)の技術を採用して開発した。

 牧野フライス製作所は、社外からレーザー発振器とガルバノスキャナー製品を調達し、自前の機械制御技術と組み合わせて新しい加工機を造った。新しい加工機とLB300・LB500を大まかに比較すると、加工精度は新しい加工機に軍配が上がる一方で、加工速度はLB300・LB500の方が優れるという。

 同社はレーザー加工機の分野では後発だが、着実に製品ラインアップを拡充し、微細加工分野への攻勢を強めている。