日立金属は、電気自動車(EV)などに使うリチウムイオン電池の正極材において、コバルト(Co)の使用量を従来から約8割減らしながら、容量や寿命の低下を抑えられる技術を開発した(図1)。Coの含有比率の削減により、製造時の二酸化炭素(CO2)排出量を減らせる。実用化へ向け、正極材の製造や電池開発を手掛けるメーカーに売り込む。

図1 リチウムイオン電池用の正極材
図1 リチウムイオン電池用の正極材
(画像:日立金属)
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 現在、EV用電池の正極材としては、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、Coを主成分とする三元系が主流だ。Niの含有比率を上げれば容量をさらに高められ、EVの航続距離の延長につながる。ただ、Niの含有比率を高めると、充放電サイクル耐性の低下により電池の寿命が短くなるとされてきた。

 日立金属が開発したのは、充放電による結晶構造の劣化を抑制できる技術だ。Ni比率を一般的な約80%から約90%まで高めても、電池寿命の低下を抑えられる(図2)。これにより、結晶構造の安定化に必要なCoの含有量を、従来の約15%から約3%まで減らせるという。

図2 正極材の電気化学特性
図2 正極材の電気化学特性
赤色部分が日立金属の開発した技術。(出所:日立金属)
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 Coは、精錬など電池ができるまでの工程でCO2の排出量が多い。加えて、生産は政情が不安定なコンゴ民主共和国に集中し、鉱石の採掘時における児童労働問題が指摘される。鉱山の権益の多くは中国企業が抑え、調達リスクも懸念されている。