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なぜ撤退しないのか

 製品として成熟し、縮小傾向にある一眼レフの開発可能性を残す理由についても、徳成氏は丁寧に説明した。同氏は2年前に三菱UFJフィナンシャル・グループからニコンに転じた。その際に一番驚いたのは基礎研究に始まり、製品が顧客に届くまで、数十年かかることもあるというリードタイムの長さだったという。「長いリードタイムの中で培った技術資産を一旦失うと、いざ類似の商品を求められたときに商品を供給できなくなる」(徳成氏)と危惧する。

 逆に技術資産を持ち続けた好事例として、最近の半導体露光装置の動向を挙げた。同社はArF(フッ化アルゴン)レーザーを露光光源として用いる最先端機種に研究開発資源を集中させてきた。ところが、昨今は汎用の半導体までもが不足し、波長365nmの水銀のスペクトル線であるi線を露光光源とする、ローエンド向けの半導体製造装置が中古市場において高値で取引されていた。

 この状況を受けて、ニコンはi線を用いた半導体露光装置を2024年に市場投入することを決定した。i線を使った新製品の発売は27年ぶりだ。徳成氏は「技術者や技術資産を社内に保持し続けたからこそ、状況に応じて開発を再開し、社会のニーズに応えられた」と語る。

 ただ現状、「一眼レフよりミラーレスのほうが開発余地があり、顧客が流れているのは事実」(徳成氏)。同社のミラーレスのフラグシップ機「Z9」の需要も堅調だという。2022年6月にはZシリーズのエントリーモデル「Z30」の発売を発表するなど、ミラーレスのラインアップ拡充に注力している。

販売が堅調な同社のミラーレスのフラグシップ機「Z9」
販売が堅調な同社のミラーレスのフラグシップ機「Z9」
(写真:ニコン)
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