みずほフィナンシャル・グループ(みずほFG)はセキュリティー・トークンの実証実験を開始した。プロトタイプを使い、ブロックチェーン(分散型台帳)を活用したシステム上で取引の模擬実験を行う。実証実験は2022年8月1日から2023年3月31日までの8カ月間実施する。
セキュリティー・トークンとは既存の株や債権、投資信託と同じ有価証券だ。ブロックチェーンなどを用いて、株や債権などを移転可能な財産的価値(トークン)としたものを指す。2020年の金融商品取引法の改正から、セキュリティー・トークンの活用に期待が高まりつつある。
ただし、セキュリティー・トークンの譲渡を行う場合、ブロックチェーン上の記録のみではこの譲渡を第三者に対抗(主張)できず、内容証明郵便など確定日付のある証書による通知・承諾が第三者対抗要件となっている。2021年に改正された産業競争力強化法で、認定新事業活動計画に従って提供される情報システムを利用した債権譲渡の通知・承諾は確定日付のある証書による通知・承諾と見なす特例が設けられたが、このシステムが実務で使われていないという課題が存在する。今回は、実証実験を通じて規制の見直しにつなげる「規制のサンドボックス制度」を活用する。
実証実験では債権や信託受益権の譲渡に関する「通知」と「承諾」を対象とする。譲渡人が譲受人に対してブロックチェーン上で譲渡申請を行い、各権利の債務者であるみずほ信託銀行などの受託者が譲渡の通知を受けた時点、または、譲渡承諾について署名しブロックチェーン上で共有した時点で、確定日付のある証書による通知や承諾を行ったものと見なされることを目指す。
ブロックチェーン関連のGinco(ギンコ)と組む。Gincoはセキュリティー・トークンの取引・保管のためのシステムや不正防止機能などを搭載したパッケージシステム「Ginco Securities Wallet」のAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)を、みずほFGの業務オペレーションおよび証券取引ワークフローに最適化して提供する。
具体的には、第三者対抗要件を具備したスマートコントラクトによる債権譲渡の署名フローを実現し、既存の証券取引業務システムにブロックチェーン上のセキュリティー・トークン利用環境を接続する予定だ。