宇宙航空研究開発機構(JAXA)と日立造船は、宇宙で全固体リチウムイオン2次電池(LIB)を充放電できることを確認した。現在も軌道上で実証実験を継続し、宇宙・地上の過酷環境下で使われる機器への展開に向けてデータを収集している。成果については、産業機器への応用も見込む。
宇宙航空研究開発機構のニュースリリース両者は、国際宇宙ステーション(ISS)の「きぼう」日本実験棟の船外に設けられた装置に全固体LIBを設置し、実験を実施。2022年3月5日、宇宙環境で充放電可能なことを「世界で初めて」(両者)実証したという。その際に得た電力でモニターカメラを動作させた。今後の実験では、基本的充放電特性データを取得するほか、真空や放射線、微小重力といった宇宙環境特有の条件による容量劣化推移の評価に必要なデータを集める。
全固体LIBは、温度が-40度~+120度の環境で使えるほか、破裂発火のリスクが小さいため、有機電解液を用いるLIBでは難しかった船外実験装置にも対応できる。他の用途としては、月面に設置する観測機器や小型ローバー(探査車)などを想定。さらに大容量化すれば、大型ローバーでの利用も期待される。地上でも、低温や真空環境下にある産業機器・装置、高温滅菌が必要な医療機器などへの適用が見込める。