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 国立情報学研究所(NII)は2022年8月、日本病理学会と共同で、胃粘膜の病理画像を解析して腫瘍の有無を判定する画像認識AI(人工知能)モデルを開発した。日本医療研究開発機構(AMED)の支援を受け、東京大学と連携した。

 国内の10施設で撮影した画像を用いて、この画像認識AIモデルの精度を検証した結果、病理医の診断とAIによる予測が90~97%一致することが分かった。NIIなどは開発したAIモデルを医師の診断のダブルチェックに活用して医師の負担軽減につなげたり、病理医が勤務していない医療機関を支援したりする考えだ。

 胃生検では胃カメラで胃の中を観察し、病変が疑われる部分の粘膜から数mm(ミリメートル)の大きさの組織を採取する。採取した組織を顕微鏡で病理診断する際に得られる画像はフルカラーで高解像度のため、大量のデータを使って学習しようとするとハードに負荷がかかりすぎてしまう。

 通常はデータの容量を削減するために画像を一辺256ピクセルの正方形に切り分けたうえでがんか否かを判定するアルゴリズムを使うが、画像のうち1カ所でも「偽陽性」の箇所があると組織全体が陽性と判定されてしまう。そこで新たに「Multi-stage semantic segmentation for pathology法(MSP法)」という機械学習法を開発し採用した。それぞれの病理画像から特徴量を抽出するのと併せて、元の病理画像における特徴量の分布も学習するのが特徴だ。従来法で偽陽性を示す箇所があった非がん症例でも、MSP法では正しく非がん症例という判定を下せた。

 がんの診断確定には病理医による顕微鏡を使った病理診断が必須だ。ただ病理医の数は慢性的に不足していて、常勤病理医がいる約700の病院のうち約300の病院では常勤病理医が1人しかいない状態だ。病理医が1人しかいない場合、病理医による診断のダブルチェックが難しく、がんの見落としなどのリスクがある。そのためNIIなどは日常病理診断のなかで最も頻度の高い検体である胃生検を対象に、病理診断のダブルチェックを行うAIの開発に取り組んできた。