TDKは、外形寸法が1.6mm×0.8mm×0.8mm(1608サイズ)と小さい、車載機器向け積層インダクター(図1)を発売した ニュースリリース 。映像信号と電源を重畳させて1本の同軸ケーブルで伝送する車載PoC(Power over Coax)に向ける。応用先は、ADAS(先進運転支援システム)機器向け車載カメラや、ドライバー・モニタリング・システム(DMS:Driver Monitoring System)などを想定する。

図1 1.6mm×0.8mm×0.8mmと小さい車載機器向け積層インダクター
図1 1.6mm×0.8mm×0.8mmと小さい車載機器向け積層インダクター
(出所:TDK)
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 新製品の特徴は、200M超〜2GHz超の広い周波数帯域において1000Ω以上の高いインピーダンスが得られることである(図2)。「これまで、1GHz以上の周波数帯域で1000Ωを超えるインピーダンスが得られる積層インダクターは実用化されていなかった。今回の新製品が業界初である」(同社)。

図2 新製品のインピーダンス周波数特性
図2 新製品のインピーダンス周波数特性
新製品は、200M超〜2GHz超の広い周波数帯域で1000Ωを超える高いインピーダンスが得られる(出所:TDK)
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 通常、車載PoCでは映像信号が電源回路に漏出し、伝送品質が劣化してしまうことを防止するために、複数個のインダクターで構成するフィルター回路を送信側と受信側に入れる(図3)。新製品を使えば、高い周波数帯域を担当していた3225サイズ(3.2mm×2.5mm)などの大きなインダクターを置き換えられる。場合によっては、新製品はインピーダンスが高い周波数帯域が広いため、使用するインダクターの員数を減らせる。このため「プリント基板上の実装面積の削減が可能になる」(同社)。

図3 新製品の応用回路例
図3 新製品の応用回路例
図左のように、一般に車載PoCでは送信側と受信側にフィルター回路を入れる。映像信号が電源回路に漏出し、伝送品質が劣化してしまうことを防止する。今回の新製品は、このフィルター回路を構成するインダクターの1つとして使える(出所:TDK)
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 また新製品には、直流重畳特性が優れているという特徴がある(図4)。同じ外形寸法のインダクターと比べると、電流を流した際のインピーダンスの変化幅が小さい。同社によると、「3225サイズと大きい巻線インダクターとほぼ同等の直流重畳特性を達成した」という。

図4 新製品の直流重畳特性
図4 新製品の直流重畳特性
一般的なインダクター(フェライトビーズ、図左)と新製品(図右)のインピーダンス特性を比較した。一般的なインダクターは、電流を流すとインピーダンス特性が大きく変化してしまう。すなわち直流重畳特性が低い。一方の新製品は、電流を流してもインピーダンスの特性の変化幅が小さい。つまり直流重畳特性が高い(出所:TDK)
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 新製品のシリーズ名は「MLJ1608WG」。型番は「MLJ1608WGCR56NTD25」。インダクタンスは0.56μHで、その許容差は±30%。定格電流は+105℃時に500mA、+125℃時に400mA。DC抵抗は標準値が0.45Ω、最大値が0.70Ωである。すでに量産を始めている。当初の量産規模は月産1000万個を予定する。サンプル価格は44円(税込み)である。

 今後同社は、MLJ1608WGシリーズの品ぞろえを拡充していく予定である。まず、インピーダンス周波数特性を維持しながら定格電流を700mAや1Aに増やした製品を市場投入するという。「定格電流を1Aに増やせば、夜間に比較的遠い場所を探知する車載レーダーなどに適用できるようになる」(同社)。