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 三菱電機と富士通コンポーネント(東京・品川)、カレアコーポレーション(富山市)の3社は共同で、非接触で脈波(心臓の拍動によって大動脈が振動して発生する波形)を計測し、それを基に集中度などの感情を推定するセンサー「エモコアイ」(emotion conditioning eye)を開発した(図1)。家電製品などに搭載して感情データに基づいて制御する、といった使い方を想定している。

図1 「エモコアイ」の外観
図1 「エモコアイ」の外観
(写真:三菱電機)
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* 三菱電機のニュースリリース: https://www.mitsubishielectric.co.jp/news/2022/0906.html

 脈波を取得する24GHzドップラーセンサー部と、計測したデータを解析するライブラリーを搭載したマイコンを1つのセンサーに実装。これにより、生体情報の計測から分析、見える化までのエッジ処理をセンサー単体で実現する。

 具体的には、ドップラーセンサーが人体からの微弱な電波の反射を捉え、脈波を非接触で計測する。マイコンは、脈波の形状や脈拍間隔のゆらぎを解析。それを基に中枢神経と自律神経の状態を把握し、独自のアルゴリズムで「集中度」「リラックス度」「眠気度」「疲労度」といった感情を推定する(図2)。さらに、推定結果を数値で見える化し、アプリケーション上に表示する(図3)。

 ドップラーセンサーは、近距離から6mまで非接触での計測が可能。30秒~5分と短時間で計測・分析できる。センサーの外形寸法は44×22mmで、家電製品などへの搭載と量産化に対応している。

図2 感情推定モデル
図2 感情推定モデル
(出所:三菱電機)
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図3 作業状況による集中指数の変化(三菱電機による試験結果)
図3 作業状況による集中指数の変化(三菱電機による試験結果)
(出所:三菱電機)
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在宅ワーカーのメンタルケアに活用へ

 開発品の利用場面として想定するのは、在宅ワーカーの生産性向上やメンタルケアだ。在宅ワーク中は、プライベートと仕事の境目が曖昧になって仕事に集中できないケースがあり、生産性の向上が課題になっている。加えて、対面で直接コミュニケーションを取る機会が減ったことでストレスを抱える人が増えているという。開発品が推定したデータに基づいて各種機器を制御すれば、集中度の向上や疲労回復、ストレスの軽減につなげられる。

 センサーの開発に際しては、三菱電機が実使用における感情の客観化のための試験と仕様検討に当たった。富士通コンポーネントは、バイタルセンサーに必要な無線や回路などのハードウエア技術の開発と、製造・量産化を担当。カレアコーポレーションは、感情を推定するアルゴリズムなどのソフトウエア開発を担当した。

 三菱電機は今後、ヘルスケアや睡眠、労務管理、カスタマーサービスなどの分野で、感情データを生かした製品・ソリューションを展開する計画。カレアコーポレーションも、こうした分野向けにアルゴリズムの開発を進める。