住友ゴム工業は、東北大学、金沢大学、埼玉大学と共同で、トマトから抽出した酵素を触媒として、タイヤの燃費性能の向上が期待できる成分を含んだポリマーの合成に成功したと発表した(図1)。同社らはかねて、天然ゴムを合成する酵素とトマト由来の酵素の化学構造が似ていることに着目し、トマト由来の酵素の構造解明や触媒機能の調査を進めてきた。今回、トマト由来の酵素の構造を一部改変すると、天然ゴムとは異なる開始基質(先頭モノマー)を使ってポリマーを合成できることを見いだし、新たなポリマーの合成に成功した。
具体的には、「先頭モノマーにベンゼン環を含むモノマーを使った」(住友ゴム工業)と言う(図2のb)。「ポリマーの末端にベンゼン環があると、タイヤを造ったときにポリマーが添加剤であるカーボンやシリカ粒子とベンゼン環を介して強く結合する。すると、タイヤの伸び縮みに伴うポリマーの動きが抑制されるので、クルマの燃費向上が期待できる」(同社)と話す。
同社は2022年6月にも、トマト由来の酵素を使って、天然ゴムと組成は同じだが構造が異なる「幾何異性体」を先頭モノマーに使ったポリマーを合成したと発表している(図2のc)。「今回も前回(6月発表)と同じ酵素を用いた。ただし、前回と今回のポリマーではタイヤの性能向上のメカニズムが異なる別のアプローチだ」(住友ゴム工業)と言う。同社は、2040年代に本技術を活用した低燃費タイヤの実用化を目指す。