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 富士通は2022年11月8日、量子コンピューティング技術とハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)を組み合わせたハイブリッドな計算処理を自動的に可能にする技術を開発したと発表した。両アルゴリズムを自動的に組み合わせ、最適な計算を実行する技術は「世界初」(同社)という。主に材料開発を中心とした量子化学計算での適用を目指す。

左からヴィヴェック・マハジャンCTO、中島耕太シニアディレクター
左からヴィヴェック・マハジャンCTO、中島耕太シニアディレクター
(画像:富士通の会見を日経クロステックがキャプチャー)
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 「将来的に全て量子、全てHPCで計算する世界になるとは思っていない。両方を組み合わせる技術が必要だと考えた。他社も力を注ぐ領域だが、世界初の技術を開発できた背景にはHPCのハードウエア開発で実績を積んできた点などが挙げられる」。富士通のヴィヴェック・マハジャンCTO(最高技術責任者)は開発した技術についてこう述べた。

 量子化学計算は、原子間の距離や角度などを算出する「分子構造の特定」、どのくらいのエネルギーを与えると分子の乖離(かいり)が発生するかといった「反応性の分析」を行う。利用するアルゴリズムや計算対象の分子などにより、求めたい特性の誤差が出るケースがある。計算が終了するまで必要な時間が分からず、限られた時間とコスト内で結果を出力することもできないという。

量子化学計算の概要
量子化学計算の概要
(画像:富士通)
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 そこで富士通は量子関連技術とHPCから最適なアルゴリズムを判別する技術と、量子化学計算の計算時間推定技術を開発。量子関連技術とHPCのハイブリッドな計算を支援する方式を編み出した。「正しい解に収束していく様子(収束性のパターン)から計算ができているのかを判定。最適なアルゴリズムを自動で選択する。専門知識がなくても計算精度を高められる」(富士通研究本部コンピューティング研究所中島耕太シニアディレクター)。原子間の距離や原子数・電子数などのパラメーターに応じて量子化学計算の時間を推定する。また「ユーザーの要望に合わせて時間と精度を調整できる」(同)ため、計算にかかる時間やコストなどを削減できる。

アルゴリズムの判別技術の概要
アルゴリズムの判別技術の概要
(画像:富士通)
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時間と精度の調整の概要
時間と精度の調整の概要
(画像:富士通)
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 現在は量子シミュレーターとHPCを組み合わせており、本格的なサービス展開まで「技術検証を踏んでいく必要がある」(中島シニアディレクター)。具体的には富士フイルムなどと量子シミュレーターを利用した材料分野で共同研究を開始しており、同技術の検証もパートナー企業と協力していく。