宇宙関連スタートアップのispace(東京・中央)は2022年11月8日、最短で2022年11月22日以降の打ち上げを予定している月面探査プロジェクト「HAKUTO-R」のミッション1に関して、2022年11月4日付で、内閣府から宇宙資源の探査および開発の許可を取得したことを明らかにした。「宇宙資源の探査及び開発に関する事業活動の促進に関する法律(宇宙資源法)」に基づく申請において、許可を得た第1号案件である。
ispaceはミッション1で、自社開発の無人着陸船(ランダー)を米SpaceX(スペースX)のロケット「Falcon(ファルコン)9」で打ち上げ、3~4カ月間、宇宙空間を航行した後、ランダーを月面に着陸させる計画。「民間企業による世界初の無人月面着陸」になる可能性があるとして注目を集めている。
ispaceは今回の許可によって、米航空宇宙局(NASA)と契約している月資源の商取引が可能になるとしている。具体的には、月のレゴリス(天体表面に堆積している砂れき)をNASAに譲渡する。
同社のランダーは、月面への着陸時の衝撃を吸収するために着陸脚先端にフットパッドを4つ搭載している(図1)。着陸時には、その衝撃によって舞い上がったレゴリスが、フットパッドに堆積する。それをランダーに搭載したカメラで撮影し、画像で確認したレゴリスの所有権を、ミッション1運用終了前にNASAに移転するという。月面での採取と所有権の移転に成功すれば、世界初の月資源の商取引になる。ただし、今回はレゴリスの物理的な受け渡しを伴うものでないとしている。
ispace 代表取締役CEO(最高経営責任者)&Founderの袴田武史氏は「今回の許可によって、ミッション1の運用およびNASAとの月資源商取引契約が日本政府の許可の下で行われることになる。我々は、2回のミッションで採取する月のレゴリスをNASAに譲渡する予定。商業的な宇宙資源利用はispaceが目指す月と地球の経済圏確立への一歩になると同時に、NASAが目指す持続的な月面滞在を支援することにもつながると信じている」とコメントしている。