楽天モバイル元社員が前職のソフトバンクから営業秘密を不正に持ち出したとして不正競争防止法違反の罪に問われた事件で、東京地方裁判所は2022年12月9日、懲役2年、執行猶予4年、罰金100万円の有罪判決を言い渡した。

(写真:日経クロステック)
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 不正競争防止法における営業秘密とは「秘密として管理されている技術上または営業上の情報で、公然と知られていないもの」を指す。営業秘密として保護されるには「秘密管理性」「非公知性」「有用性」の3つの要素を満たす必要がある。弁護側は被告が持ち出した携帯電話基地局の位置情報などについては、「アクセス制限が十分になされていなかった」「公開された情報である」「他社には利用価値がない情報」など、3要素のいずれにも該当しないと主張していた。

 これに対し東京地裁は営業秘密に該当するとした。「秘密管理性は容易に認識できる。アクセス制限に不十分な面があったとしても秘密管理性を否定することにはならない」「(持ち出した情報には)外部に公開されていない情報も含まれ、全体が非公知性がないとはならない」「(持ち出した情報を基に自社設備との)比較・検討などはでき、全く参考にならないとは考えがたい。(ソフトバンクが)どういう戦略で取り組んでいるかうかがいしれるため、客観的に有用」など、いずれの要素も充足していると判断したからだ。

 また被告には故意があったと認められた。ソフトバンクが長年にわたって試行錯誤で築いてきた情報、5G(第5世代移動通信システム)の展開などに関する情報を持ち出したのは悪質とした。

 ソフトバンクは同日、今回の判決を受け、「持ち出された情報が営業秘密だと認められたことは当社の主張に沿ったものだと受け止めている」とコメントした。楽天モバイルは「コメントする立場にはないので詳細な回答は控える」としている。