事業創出支援スタートアップのRelic(レリック)は2022年12月20日、海外の先進的なビジネスモデルを参考に事業を興すための支援サービスを始める。大型の資金調達をしたり実績豊富なVC(ベンチャーキャピタル)が出資したりしている海外スタートアップの事例を集めた、100万件規模のデータベースを同社が独自に作成。事業創出を目指す企業や起業志望者の要望に応じて、有望なものを絞り込んで事業案として提案する。海外で一定の評価を獲得済みのビジネスモデルを時間差で事業化する「タイムマシン経営」を、一部の先進経営者だけでなく広く企業が取り組めるようにする。

 サービス名称は「IDEATION Cloud(アイディエーションクラウド)」。顧客が希望する事業分野や前提条件、保有する技術や知的財産を聞き取り、要件に合った海外スタートアップの事例をデータベースから抽出。最短4週間程度で数十件の案件リストを顧客に提案し、日本市場に合わせたビジネスモデルの調整や製品・サービスの改修を助言して事業化を支援する。

 Relicは同サービス向けに、海外の有望なスタートアップの情報を100万件規模で集めたデータベースを構築した。世界最大級のスタートアップ関連データベース「Crunchbase」から購入したデータや同社が独自に集めたデータを基に、日本語での検索や抽出をしやすく成形した。

 「成功する可能性が一定程度見込めるアイデアを基に、事業創出に取り組める」。Relicの永渕貴煕インキュベーション事業本部ビジネスディベロップメント事業部マネージャーは、同サービスの利点をこう語る。同サービス向けに集めたスタートアップの事業はVCなどによる出資実績があるもののみ。顧客に代わってVCが事業化への問題点をつぶしたり市場性を調査したりしたものと見なせるため、「不確実性の低いアイデアの中から事業の候補を選べる」(同)。

 Relicは顧客の1社であるVC、デライト・ベンチャーズでの事業創出実績を基に同サービスを開発した。デライトは創業直後のスタートアップへの投資に加えて、起業志望者と共同での事業創出にも取り組む。2021年7月、Relicに事業アイデアのリストづくりを依頼。Relicは海外の資金調達事例を2週間で600件ほどリストアップし、特に有望なものをデライトに提案した。デライトはアイデアを絞り込むとともに起業志望者とアイデアをマッチングし、Webサイトで見込み客との商談を調整するインサイドセールスのスタートアップ「immedio」の起業につなげた。

 「社会や企業の課題を解決するためのスタートアップに投資するのが当社の方針。Relicがリストアップするのは米国などで顕在化している課題に取り組む案件であり、筋がいい」。デライトの坂東龍プリンシパルはRelicのサービスをこう評価する。

 新サービスの料金は顧客への聞き取りからアイデアの抽出までで600万円前後。データベースや提案の仕組みを整えることで、同様のサービスを手掛ける競合他社に比べて1桁安価に提供できるとみる。