ドイツPorsche(ポルシェ)は2022年12月20日、チリの事業会社Highly Innovative Fuels(HIF)と、その国際パートナーらとともに、合成燃料「eFuel」の生産を開始したと発表した。チリ最南端のプンタアレナスにあるハルオニ工場は、風力エネルギーを使って水とCO2から合成燃料を製造する。ガソリンエンジン車にこの合成燃料を使うことで、走行中はほぼカーボンニュートラルになる。
初期段階では、年間約13万リットルのeFuelを生産する計画だ。生産したeFuelは、ワンメイク・スポーツカー・レース「Porsche Mobil 1 Supercup」やポルシェ・エクスペリエンス・センターなどで実施されるプロモーション用に使われる。その後、最初の生産拡大で2020年代半ばに年間5500万リットルに、さらにそれから2年ぐらい後には5億5000万リットルまで増産する予定という。
工場のあるチリ南部は年間270日ほど強い風が吹いているため、風力タービンをフル稼働させるのに理想的な条件を備えている。また、マゼラン海峡に近く、カボ・ネグロ港から従来の燃料と同じように既存のインフラを利用してeFuelを世界中に輸出することも可能だ。
ポルシェは2030年までにバリューチェーン全体でカーボンニュートラルの実現を目指している。車両のEV(電気自動車)化を進めているものの、普及にはまだ多額のインフラ投資が必要である。現在、世界中で13億台以上のエンジン車が稼働しており、これらの多くは今後数十年に渡って使われる。こうした既存のエンジン車のユーザーが手軽に炭素中立を実現する手段として、合成燃料が有効だとしている。