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 東北大学発スタートアップのボールウェーブ(仙台市)と医療機器大手のシスメックスは、呼気などを試料とする次世代体外診断技術の共同開発に向けて基本合意した。ボールウェーブが有する気体中の微量な化学物質を検出する技術を、医療向けに応用する。手軽に低侵襲な検査ができる装置の強みを生かし、まず救急医療の現場などで使えるよう開発を進める考えだ。

 ボールウェーブの独自技術である「ボールSAWセンサ」は、気体中の多種類の微量化学物質を、従来技術と比較して約100倍の感度で検出し分析するというもの。微小な水晶球の表面に感応膜を形成したものをセンサーとしており、微量水分や天然ガス、有機混合ガスなどの多様な気体を計測できる。同技術による手のひらサイズの小型ガスクロマトグラフ「Sylph(シルフ)」は、現在は主に製造現場で空気汚染などを検出するのに使われている。

ボールウェーブが販売する小型ガスクロマトグラフ「Sylph」
ボールウェーブが販売する小型ガスクロマトグラフ「Sylph」
(出所:ボールウェーブ)
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 体外診断薬や医療機器開発のノウハウを持つシスメックスとの基本合意により、同技術の医療応用を進める。呼気や皮膚から発生するガスに含まれる化学物質を検出・分析することで、疾患の診断につなげる。ボールウェーブによれば、海外ではあらゆる疾患で、呼気や皮膚ガスによる診断可能性が研究されているという。

 ボールウェーブとシスメックスは手のひらサイズに収まるSylphの強みを生かし、まず救急医療の現場などで使用することを想定し開発を進める方針だ。大がかりな装置を使うことなくその場で診断できれば、救急医療の効率化につながると期待する。また、近年急拡大している遠隔医療や在宅医療への貢献も見込んでいるという。