村田製作所はV2X(Vehicle to Everything)向けの通信モジュール「Type 1YL」と「Type 2AN」を開発した。特徴は、世界で標準化が進む2つの無線通信方式に1つのモジュールで対応できることだ。同社がV2X向けの通信モジュールを開発するのは初めて。
V2X通信には世界で有力な通信方式として、狭域通信の「DSRC(Dedicated Short Range Communications)」と、携帯電話での通信技術を基とする「セルラーV2X(C-V2X)」と呼ぶ方式が存在する。現状では国や地域によって対応する方式が異なるため、それぞれ別のシステム設計が必要となっている。
村田製作所の開発品は、1つのモジュールで両方式に対応できる。国や地域の通信方式によってシステムの設計を変える必要がないため、コストを低減できるという。従来のV2X向け通信モジュールは、両方式のうち一方だけに対応するものが多かった。
1つのモジュールに仕上げるために、イスラエルAutotalks(オートトークス)のV2X通信向けのチップセットを搭載した。村田製作所が持つ高周波(RF)設計や高密度実装の技術も生かした。モジュールの外形寸法は、Type 1YLが「業界最小レベル」(同社)の33×27×3mmで、同2ANが38.5×37.5×8.5mmである。
村田製作所は、同モジュールで車両同士や車両とインフラ間の通信を実現し、衝突事故の防止や交通渋滞の緩和につなげたい考えだ。車車間(Vehicle to Vehicle、V2V)通信や路車間(Vehicle to Infrastructure、V2I)通信といった用途を想定する。
V2Vでは、例えば走行する前後の車両同士で通信する。前方車両のブレーキランプが後方車両から見えなくても、後方車両の運転者に前方車両がブレーキをかけているのを知らせることが可能になる。前方車両のブレーキ信号を後方車両が受け取ることで、目に見えない危険を早く発見できるという。
V2Iでは、道路沿いのインフラと車両が通信することで、信号機が変わるタイミングに合わせて車両の速度を最適化できる。加減速の頻度を減らし、交差点で止まることを少なくすることで、交通渋滞の緩和につなげられるという。