伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)と三重県工業研究所の窯業研究室(四日市市、以下「窯業研究室」)は、AI(人工知能)を用いた陶磁器の材料開発に取り組んでいる。2022年8月に実証実験を開始し、同年12月にはAIモデルの改善に着手した。今後、土鍋などの耐熱陶器にも使える材料の探索も計画している。
* 伊藤忠テクノソリューションズのニュースリリース: https://www.ctc-g.co.jp/company/release/20230112-01528.html両者は陶磁器の機能性向上を目的として、原料配合や焼成条件の最適化、代替原料の発見を目指す。実証実験では、過去の実験で求められた原料配合や焼成条件、性能といったデータを入力し、化学成分を含めて整理した上でAIモデルを出力。そのAIモデルから、原料を効率的に利用し、耐熱性や吸水率などの機能性を高める条件を探索する。さらに、AIで求めた条件で陶磁器を作製し、予測した結果になるか否かを検証するとともに、新しいデータを加えてAIモデルの精度を向上させ、材料開発に有用なAIモデルに仕上げていく。
CTCによると、原材料の価格高騰や枯渇などの影響で、原料の効率的な消費と代替原料の開発が求められているという。従来、長年の経験や試行錯誤を基に原料の配合や焼成条件を導き出しているが、AIの活用によってこれらを効率化できる。
三重県は、耐熱陶器や急須、花瓶などの有数の産地で、土鍋では80%の国内シェアを持つ。窯業研究室は、県内の窯業事業者に対する技術支援のほか、原材料の試験研究や製品のデザイン開発、人材育成に取り組んでいる。
CTCは、材料分析向けソリューションの提供で蓄積したノウハウを基に、マテリアルズ・インフォマティクス(MI)を推進。具体的なサービスとしては、材料開発の環境構築支援サービス「MI Success Lab」や材料解析ソリューションなどを提供する。窯業研究室との試みは、伝統工芸へのAI活用を図るプロジェクト「NeuCraft(ニュークラフト)」の第2弾。CTCは同プロジェクトを通して「地域社会の課題解決や活性化に貢献していく」(同社)考えだ。
* 2022年11月8日付、伊藤忠テクノソリューションズのニュースリリース: https://www.ctc-g.co.jp/company/release/20221108-01499.html