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 東京理科大学と公立諏訪東京理科大学は、付加製造(アディティブ・マニュファクチュアリング、AM)の1種で、金属部品などの基材にレーザーや電子ビームを照射しながら金属粉末材料を吹き付けて造形する指向性エネルギー堆積(DED)法において、金属の溶融や凝固などの現象を数値モデル化し、造形をシミュレーションできるシステムを開発した(図1)。温度分布や変形状態、残留応力分布の予測が可能となり、効率的な造形条件の検討に役立つという。

図1 新たなシミュレーション技術の概要
図1 新たなシミュレーション技術の概要
DED方式の金属AM装置で造形する様子(左)とプリントヘッドの模式図(中央)。新たな技術では、DED方式の金属AMを数値モデル化し、造形する様子や温度分布などをシミュレーションできる(右)。(出所:東京理科大学)
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 研究グループは、金属粉末の堆積領域を自動的に生み出していく「デス-バースアルゴリズム」を考案。その堆積領域に対して、熱の伝わり方などを表現する「熱輻射-熱伝導モデル」と力の伝わり方などを表現する「粘塑性-熱弾塑性構成モデル」を適用することで、金属粉末が溶融してから凝固するまでの一連の状態変化を再現した(図2)。

図2 シミュレーション結果の例
図2 シミュレーション結果の例
(ⅰ)は、平板(青色)の表面に対して積層造形する様子。レーザーによって金属粉末の堆積層を造形する過程や加熱された温度分布を再現している。この他、堆積過程における変形(ⅱ)や造形終了時の残留応力(ⅲ)も予測できる。(出所:東京理科大学)
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 DED方式の金属AM装置は、既存部品に付加造形できることから、金型や発電用タービンといった高価な金属部品の補修用途として注目されている。ただし、レーザーによる熱で基材が変形したり、造形部の形が崩れたりするため、狙いの形状を得るには造形条件の試行錯誤が必要だったという。