昭和電工と昭和電工マテリアルズ(旧日立化成)が統合して発足したレゾナック・ホールディングスの事業会社であるレゾナック(東京・港)は、2023年1月17日、6G(次世代通信方式)向け半導体の新材料開発を始動すると発表した。6Gは2030年前後に実現を見込み、関連技術の開発競争が進む。同社が横浜市に新設したオープンイノベーション拠点で、ベンチャー企業や大学と協業して取り組む。
6Gは現行の5G(第5世代移動通信方式)の次世代として、「5Gの100倍」(同社)となる超高速通信が実現できるとする。0.1T~10THz前後の「テラヘルツ波」と呼ばれる周波数帯の電波を利用する検討が進むものの、こうした高周波では回路内部で伝送損失しやすい。そこで、伝送損失を大幅に削減する新しい半導体材料が求められる。
レゾナックは半導体材料の開発に、複合材料用の樹脂やフィラー(充てん剤)向けのセラミックス、界面制御技術などといった素材合成の段階から取り組む。材料開発には人工知能(AI)やシミュレーション予測を使い、必要となる特性を出すために最適な材料の組み合わせを探索する。いわゆる「マテリアルズ・インフォマティクス(MI)」である。
MIを使うことで、従来見つけられなかった化学構造式を短期間で導き出すことができる。「これまでの実験では、1つの素材の組み合わせの検証に3カ月必要だった。(同手法であれば)1日で1つの組み合わせが計算可能となり、3カ月で90種類の組み合わせの検証が可能になる」(同社)と説明する。
レゾナックのオープンイノベーション拠点「共創の舞台」は、同社の研究開発の中核を担う。「強みとする計算科学や材料解析、量産化のための製造プロセス技術・設備管理、化学品安全管理・評価といった専門機能を持つメンバーが集結した。計算情報科学研究センターには石油化学や基礎化学分野で分子設計レベルの触媒開発などに携わってきたシミュレーション・AI・MIなどの専門家が70人在籍する。その多くが半導体材料の開発にシフトする」(同社)という(図)。