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 NTNは独自に開発した自動車用の「クリープレス軸受」を2025年にも量産化することを目指す。固定した軸受の外輪が円周方向に回転してずれる「クリープ」と呼ぶ現象を低減でき、モーターや変速機に使った場合、異音や振動を抑制できるという。

クリープレス軸受
クリープレス軸受
外輪外径面の上部が一部削られている。(写真:日経Automotive)
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 クリープが起きる背景には、自動車のモーターや変速機などの動力伝達装置が年々小型・軽量化していることが挙げられる。軸受の外輪や内輪、軸受を固定するハウジングを薄肉にすると、クリープが起きやすくなる。

 クリープが生じると、外輪とハウジングのはめあい面の摩耗により、軸受のずれや傾きが発生し、異音や振動が起きるほか、摩耗粉によって軸受の寿命が低下する。特に変速機内で一定方向に高荷重がかかる軸受では、クリープが発生しやすい。

 クリープレス軸受では、外輪外径面の一部を削り、逃げ部を設けることで、ハウジングとの接触を回避させた。一定方向に荷重がかかる条件で、ひずみの進行波を遮断し、高荷重領域でもクリープを低減できるようになった。「外輪外径面の一部を削る加工手法の選択に苦労した」(同社自動車事業本部自動車軸受製品ユニット自動車軸受技術部、開発・基礎技術グループ主事の川口隼人氏)という。追加部品が不要なため、同一寸法の標準仕様の軸受から置き換えられるのも特徴だ。

標準品(左)と開発品(右)の比較
標準品(左)と開発品(右)の比較
外輪外径面の一部を削ることで逃げ部を作り、ひずみの進行波を遮断した。(出所:NTN)
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 現在、国内の自動車、モーター、変速機メーカーから引き合いが来ている。「一部のメーカーには、試作納入しており、評価をもらっている段階だ」(同社広報関係者)という。