PR

 日本電産で社長兼最高経営責任者(CEO)を務めた関潤氏が、台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業へ──。2023年1月30日、鴻海精密工業が同氏を電気自動車(EV)の最高戦略責任者(CSO)に任命すると発表した。クルマづくりに精通し、EVの駆動用モジュールである電動アクスル事業にもたけた人材を経営に取り込むことで、鴻海精密工業はEV事業を加速させるとみられる。

関氏(左)に社長を託した時の永守会長(右)
関氏(左)に社長を託した時の永守会長(右)
かつては蜜月状態にあったのだが……。(写真:日経クロステック)
[画像のクリックで拡大表示]

 関氏は日産自動車の副最高執行責任者(COO)を務めた後、日本電産の創業者である永守重信氏(以下、永守会長)に請われて日本電産に転身し、2021年にCEOに就任した。ところが、永守会長はわずか1年で関社長のCEO職を解き、COOに降格させる人事を発表した。その後、日本電産が次の成長の柱に据えた車載事業の赤字の経営責任を実質的に負わされる形で、関氏は日本電産を退社していた。

 関氏の辞任について、永守会長は「私から首を切るようなことは一切ない」「けんかではなく指導だ」と記者会見で語り、株価の下落と「すぐやる、必ずやる、できるまでやる」という企業文化が崩れることに我慢がならなかったと説明していた。一方、関氏の辞任を境に、永守会長や日本電産の経営などに関して厳しい論調の記事が続出。さながら関氏と永守会長の“代理戦争”の様相を呈していた。

鴻海精密工業の試作EV「モデルB」
鴻海精密工業の試作EV「モデルB」
同社が2022年10月に発表したスポーツ多目的車(SUV)タイプのEV。全長4300mmでホイールベースが2800mm。航続距離は450km。同社が主導するオープンプラットフォーム「MIHオープンプラットフォーム」を採用している。
[画像のクリックで拡大表示]

 興味深いのは、関氏が売上高で日本電産の10倍を優に超えるグローバル企業のCSOに転身したことだ。日本電産が2030年に目指す売上高が10兆円であるのに対し、鴻海精密工業のそれは2022年通期の時点で既に28兆円を超えている(日本電産の2022年度通期の売上高予想は2兆2000億円)。その上、鴻海精密工業は日本電産よりも成長が速い。