フィンランドNokia(ノキア)は2023年1月26日(現地時間)、次世代モバイルネットワークで活用が進むAI(人工知能)やML(機械学習)の解説を公開した。以下はその概要となる。
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3GPPでは、5Gでネットワーク自動化に向けAI/ML技術を導入した後、5G Advancedの最初の標準化仕様となるリリース18にて、デバイスや無線RANなどへのAI/ML活用を進めている。リリース19では無線インターフェースやRAN、システムアーキテクチャーにおいてAI/MLの活用がさらに進み、リリース20ではAIとMLがシステムに不可欠となる。分散学習のような先端技術がネットワークやデバイスに深く組み込まれたAIと連携し、性能やユーザビリティーを改善するようになる。
AI/MLの将来性と課題
ネットワークへのAI/ML技術導入による効果としては、下記のようなものが考えられる。
- より効率的な無線伝送と無線リソース管理に向けたデバイスとネットワーク強化:3GPPでは、既にセル端でのスループットやその他項目において最大30%の性能改善が見られたとしている
- AI/MLを活用したベースバンドソリューション:Nokiaでは、既に最大3dBの受信機性能改善と30%のスループット改善を報告済みである
- 省エネルギー化:ネットワークノードやデバイスの消費電力削減、エネルギー効率向上を加速
- エンドユーザーの体験改善:遅延時間とネットワークリンク障害を低減し、AR(拡張現実)やXRなど利用時のユーザー体験を改善
- エンドツーエンドのネットワーク管理自動化:ネットワーク状態や障害へのより迅速な予測と対応を含むネットワーク管理自動化
加えて、開発担当と運用担当が協調するDevOpsを拡張したMLOps(機械学習と開発、運用の協調)や、MLモデルトレーニングと開発・展開の高度に自動化されたプロセスへの統合などによる運用効率向上も可能となる。
一方で、AI/MLの可能性を最大限に引き出すには、克服すべき課題もある。標準化に向けては、MLを活用するための効率的で柔軟な運用フレームワークの定義が必要となる。MLモデルのトレーニングでは、高品質な入力を保証しつつ、扱いやすいデータの収集を実現しなければならない。また、MLを活用するソリューションの適応性を考慮した、適切な性能要件を定義する必要もある。
AI/MLはすでにモバイル通信ネットワークの基本的な構成要素となりつつあるが、その潜在能力はまだ十分に研究されていない。上述の調査を進めることで、5G-Advancedから6G以降のモバイル通信でのAI/ML活用に向けた基盤が作り上げられていくだろう。