スウェーデンEricsson(エリクソン)は2023年2月2日(現地時間)、ルクセンブルクの鉄鋼メーカーであるArcelorMittal(アルセロール・ミッタル)のフランス拠点において、製鉄所を5Gでデジタル化する「5G Steel」の運用開始を発表した。仏Orange Business Services(オレンジビジネスサービス)と連携して進めるこの取り組みには、France Relance economy revival plan(フランス経済再興計画)の一環としてフランス政府もサポートしている。
関連ニュースリリース: 5G Steel: the first enhanced mobile broadband use cases to decarbonize the steel industry and work in mobility on an industrial site in France5G Steelの特徴としては、以下のようなものがある。
- 広域カバレッジ:高く積み上げられた金属の下を含む屋外、屋内、構内すべての場所で接続可能
- 高速性:モデル化されたプロセスやネットワークに接続された機器類、製品データの処理や応答性が高速化
- 低遅延通信:リスクの高い場所での安全性を確保し、自動運転車の自律走行や遠隔操作の実現をサポート
- ネットワークスライシング:様々な運用プロセスに適したレベルのネットワークスライシングを提供
- データセキュリティー:プライベートモバイルネットワークで、機密性の高い産業データを保護
ArcelorMittalでは、この5G Steelを次の2点に活用する。
- 5G接続オペレーター:従業員とプロセスのモビリティーを確保し、デジタル化を進めることで、従業員の働き方を変革する。例えば、熱間圧延機の操作、入力、データ収集などをタブレット端末などを使って行い、メンテナンス作業中の検査、安全監査、ロックアウト・タグアウト処理などを、より迅速かつ直感的に進められるようにする。
- 鉄鋼のリサイクル:リサイクル鉄鋼ヤードの管理を支援し、管理対象範囲の広域化と対応速度高速化を実現する。リサイクル用鉄鋼の計量、スキャンを行い、密度と組成を評価。このデータを5G Steelを介して自動的に送信することで品質管理を効率化する。クレーンや荷物を積み上げるスタッカーなどが、生産プログラムから直接情報を受け取り、5G Steelを介して実行結果を通知するといった自動化も可能にしていく。
将来的には、構内を運行する鉄道や車両の自動運転化、構内情報フィードバックによるモバイルでのメンテナンス手法の確立、VR(仮想現実)/AR(拡張現実)の活用などを進めていく。
5G Steelは現在、フランス北部Dunkerque(ダンケルク)とMardyck(マルディック)の工場に配備されている。2023年内には、フランス東部Florange(フロランジュ)への拡張も予定している。
5G Steelによるバリューチェーン開発などの取り組みも進めており、今後、Dunkerqueの主要な港にも設置していく。フランス北端Hauts-de-France(オー・ド・フランス)や北東部Grand Est(グラン・テスト)地区に拡張するためのテストも行っている。