日本製鉄が堅調を維持している。2023年2月9日に発表した2022年4~12月期の連結決算について、売上収益は前年同期比20.6%増の5兆9616億円、事業利益は同2.4%増の7618億円となった。粗鋼生産量は減少傾向だが、高炉休止をはじめとする生産設備の集約や、大口顧客との長期契約である「ひも付き価格」の是正などが業績に貢献した。
昨今、粗鋼生産量は世界的な減少基調にある。同社の単独粗鋼生産量は、2014年度の4823万トンから2022年度には3420万トンに減少する見通し。今回、エネルギー価格や原材料費の上昇という逆風もあるなかで増収増益となった。
事業利益を前年同期と比べると、生産出荷の減少で1300億円分の押し下げがあった。一方、グループ各社の収益力が軒並み向上しているのに加え、継続稼働する高炉の操業効率を上げるといったコスト改善などの積み上げにより、全体でみると前年同期よりも181億円のプラスとなった。
決算説明会で、同社常務執行役員財務部長の岩井尚彦氏は「日本製鉄が取り組んできた損益分岐点の管理をグループ各社にも徹底して浸透させた」と語り、構造改革の成果を強調。「固定費を圧縮しながら製品価格を高め、数量に頼らず利益を出せる構造になってきた」(岩井氏)。
2022年4月~2023年3月通期の連結業績予想について、売上収益は前年同期比17.5%増の8兆円、事業利益は同7.3%減の8700億円を見込む。これまでの予想を据え置いた。
なお、同社は同日、大型高炉を用いた水素還元の実証実験を2026年1月から開始すると発表。同社東日本製鉄所君津地区の第2高炉に水素系ガスを吹き込み、製鉄工程における二酸化炭素の排出削減を目指す。これまで小型の試験高炉で開発してきた技術を実際の大型高炉に適用する「世界初の取り組み」(同社)となる。