東北大学などの研究グループは、AI(人工知能)を活用して機械の摺動(しゅうどう)面の損傷部位を特定する技術を開発。併せて、損傷部位との接触を避けながら摺動させる技術も開発した(図1)。これらにより、摺動面を直接観察できない機械の監視と、損傷発生時の安全な機械停止が可能になる。発電タービンなどの重大インシデントを防ぐ技術として期待できる。
* 東北大学のニュースリリース: http://www.tohoku.ac.jp/japanese/newimg/pressimg/tohokuuniv_press20230213_01web_ai.pdf新たな技術は、東北大学大学院工学研究科准教授の村島基之氏や、名古屋大学大学院工学研究科教授の梅原徳次氏、韓国光技術院(KOPTI)研究員のWoo-Young Lee氏らの研究グループが開発した。一般に摺動面は、機械の運転中は常に動き続けている上、その表面は物体同士に挟まれているため監視が難しい。加えて、仮に損傷部位を特定できても、既存の技術ではその位置を回避して運転を続けることはできないという課題もあった。
そこで研究グループが着目したのが、表面の形状を変形させられる機能性表面「変形表面」だ。一般に変形表面はゴムなどの柔軟性の高い材料を用いるが、村島氏らによる近年の研究で、金属や樹脂などの硬質材料でも変形を実現する技術を開発している(図2)。その変形表面を機械の摺動面に用いて、相手面と接触している位置関係をアンバランスにする(力の分布を不均一にする)と、損傷部と接触した際の摩擦振動に特徴が現れる。研究では、変形形状の違いに応じて生じる摩擦信号の特徴をAIに学習させて、摩擦相手面の損傷部の位置を特定するシステムを開発した。さらに、変形表面の形状を相手面の移動量に合わせて連続的に制御することで損傷部を回避する摺動面システムも開発した。