帝人は2023年1月に医療材料の物流を効率化するシステムを本格稼働させた。複数の医療機関で使う医療材料を保管する共同院外倉庫を設置し、そこで仕分け作業を済ませて各病院内での手間を削減する。RFIDタグで在庫を一元管理する仕組みも導入した。今後は参加病院を増やし、物流システムの規模を拡大していく考えだ。

「スマート物流サービス」のイメージ
「スマート物流サービス」のイメージ
(出所:帝人)
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 医療材料の物流システムは、内閣府が主導する国家プロジェクト「スマート物流サービス」として構築した。帝人を研究リーダーとし、協力医療機関として聖路加国際病院と東京医科歯科大学病院の2病院、卸業者の小西医療器、医療材料メーカーのホギメディカルが組んで、2021年10月から2022年12月まで実証実験を進めてきた。

 従来、病院内の各部署に届けるための仕分け作業は病院の院内倉庫で実施していたが、実証実験では院外に設置した共同倉庫で仕分けるようにした。これにより、聖路加国際病院では院内物流業務を約60%削減できた。共同倉庫への一括配送によって医療材料メーカー側の配送効率も向上し、実証実験では約30%の配送回数削減のめどが付いたという。

共同院外倉庫での出荷作業の様子
共同院外倉庫での出荷作業の様子
(出所:帝人)
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 また従来のバーコードによる在庫管理をRFIDタグに切り替えた。バーコードでは1つずつ読み込む作業が必要だったが、RFIDでは複数の物品を一度にスキャンして検品できるようになった。帝人の2次元通信によるRFID管理技術は、どの棚に何が何個置いてあるかという情報も自動で取得できる。それらを共通のデータプラットフォームで一元管理し、入出荷情報や発注情報、各病院での使用実績などを可視化できる体制を構築した。

 帝人のスマートセンシング事業推進班の平野義明班長は「1エリア10病院以上が参加すると効果が出やすい物量になる」と語る。今後は参加病院をさらに募り、まずは東京都内で物流システムの規模を拡大する考えだ。2025年までには他の大都市圏での展開も目指す。