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 横河電機は、プラント制御向けのエッジコントローラー上で強化学習AI(人工知能)を活用できるサービスを開始した(図1)。生産設備などに組み込んで使うコントローラー「OpreX Realtime OS-based Machine Controllers(e-RT3)」のオプションとして提供する(図2)。人手に頼らず、複雑な制御を実現できるとする。

図1 エッジコントローラーで強化学習AIを活用するサービスのイメージ
図1 エッジコントローラーで強化学習AIを活用するサービスのイメージ
(出所:横河電機)
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図2 エッジコントローラー「e-RT3」
図2 エッジコントローラー「e-RT3」
(出所:横河電機)
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* 横河電機のニュースリリース: https://www.yokogawa.co.jp/news/press-releases/2023/2023-02-27-ja/

 新サービスには、奈良先端科学技術大学院大学教授の松原崇充氏と共同開発した強化学習AI「Factorial Kernel Dynamic Policy Programming」(FKDPP)を用いる。同社は2022年、FKDPPを利用した35日間の自律制御に成功しており、新サービスでは、この強化学習AIでAI制御モデルを生成して、エッジコントローラーに実装する。

 従来の制御技術であるPID制御や高度制御(Advanced Process Control:APC)が組めなかった箇所にFKDPPを適用すれば、自律化と最適制御を同時に実現でき、外乱に左右されにくい安定した制御が可能になるという。制御対象によって効果は異なるが、オーバーシュート(設定値を上回る状態)も抑えられる。例えば、不要な加熱によるヒーターへの負荷を減らせるので、装置の寿命延長が見込める。

 同社が実験用炉で実施した加熱制御の実証では、オートチューニングしたPID制御で約30分かかっていた整定時間を、FKDPPは約10分に縮められた(図3)。整定時間の短縮により、省エネルギーと生産性の向上が期待できる。品質を維持しながらエネルギーの使用量を削減する、といった複雑な条件も満たせる。

図3 PID制御とAI自律制御を比較した実証の結果
図3 PID制御とAI自律制御を比較した実証の結果
(出所:横河電機)
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 ユーザーの使いやすさにも配慮した。AIの専門知識がなくてもユーザー側で制御モデルを生成してコントローラーに組み込める。既存の設備を生かしながら部分的にエッジコントローラーを後付けすることにより、FKDPPを適用できる。0.01秒からの制御周期に対応しており、高速性が求められる装置の制御にも使えるという。

 サービスの利用に当たっては、e-RT3の購入の他、FKDPPを用いた学習サービスへの申し込みやAI制御モデルを実装するためのe-RT3用ソフトウエアパッケージ、AI制御モデルを実行するためのライセンスが必要。制御箇所に応じて、パッケージまたは導入支援のコンサルティングやトレーニングプログラム、エンジニアリングなどを提供する。