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食害を受けたトマト株の発した香り物質を健全なトマト株が受け取ると、身を守るための配糖体を生成する(出所:静岡大学)
食害を受けたトマト株の発した香り物質を健全なトマト株が受け取ると、身を守るための配糖体を生成する(出所:静岡大学)
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 静岡大学を中心とする研究グループは、植物の防御力を強化する配糖体の生成メカニズム解明に成功した。植物同士のコミュニケーションによって将来起こり得る被害を察知した植物が身を守るために行う行動を分子レベルで明らかにし、それに関わる酵素遺伝子を発見した。今後、この研究結果を応用することで、病害虫に強い品種の開発を加速し、農業被害の軽減、病害虫駆除の省力化など、農作物の生産性向上につなげていく。

ニュースリリース

 昆虫に食べられた植物は、危険を知らせる警戒情報として香り物質を発散する。すると、この香り物質を取り込んだ周囲の植物は、害虫の成長を抑制したり生存率を低下させたりする働きを持つ配糖体を生成し、体内に貯蔵し始める。トマトを使った従来の研究で、ここまでは明らかになっていた。

 本研究では、香り物質を取り込んだ植物が、どのように配糖体を生成し防御力を強化していくのか、その仕組みの解明に取り組んだ。配糖体を作るトマトとほとんど作らないトマトの遺伝子を比較し、香り物質を配糖体に変換する酵素として、配糖化酵素UGT91R1を発見した。ゲノム編集技術を用いて、UGT91R1遺伝子を欠失させた種と過剰に発言させた種を作成し、UGT91R1によって生成する配糖体を多い方が、食害に対する抵抗性を高まることも確認している。

 本研究は、静岡大学グリーン科学技術研究所/農学部の大西利幸教授,京都大学生態学研究センターの高林純示名誉教授、筑波大学生命環境系の杉本貢一助教、サントリーグローバルイノベーションセンターの小埜栄一郎主任研究員、山口大学大学院創成科学研究科(農学系学域)松井健二教授らの研究グループに、サントリー生命科学財団、名古屋工業大学、国際医療福祉大学が参加して行われた。