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 凸版印刷は、工場や施設内で発生した異常音を遠隔監視する収音センシングシステムを開発した。ボルトのゆるみに起因する衝撃音や部品の劣化に伴う摩擦音など、正常稼働時には発生しない音を捉え、異常の早期発見や部品の交換時期の把握につなげる。同社のスマート点検支援サービス「e-Platch(イープラッチ)」専用のツールとして、2023年4月から提供する(図1)。

図1 スマート点検支援サービス「e-Platch」の概要
図1 スマート点検支援サービス「e-Platch」の概要
(出所:凸版印刷)
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* 凸版印刷のニュースリリース

 収音センシングシステムは「収音センサー」と「データ閲覧アプリ」から成る(図2)。収音センサーで収集した音を、160~1万6000Hzの帯域を21分割した周波数帯ごとの音強度データとして取得し、圧縮・分割した上でアプリ側に送る。アプリ側では、受信したデータのデシベル(dB)値を周波数帯ごとにプロットし、音の傾向をグラフ化する。ユーザーが設定したしきい値を超えると、アラートを発報する。

図2 収音センシングシステムを構成する「収音センサー」(左)と、「データ閲覧アプリ」の画面例
図2 収音センシングシステムを構成する「収音センサー」(左)と、「データ閲覧アプリ」の画面例
(出所:凸版印刷)
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 アラートを出す機能や、収音したデータの傾向から異常を定義・検出する機能などをアプリ側に持たせ、価格を従来品の「半額以下」(凸版印刷)に抑えた。従来と同じ予算でもセンサーの設置箇所を増やせるため、きめ細かな監視が可能になる。

 工場では常に機械音や作業音が発生しているため、従来は、管理者が現場へ足を運び、これらバックグラウンドノイズの中から機器の不具合やその予兆を示す音を聞き分けていた。遠隔で異常音を管理するには検知センサーなどを導入する必要があるが、既存の製品は音圧のみを記録する低価格のものから多機能な数十万円台のものまでさまざまで、適切な機器の選定には高度な知見が要る。さらに、検知した音を伝送するには、ケーブルを敷設して電源を確保しなければならないといった点が、異常音を検知するシステムを導入する上での障壁になっていたという。そこで凸版印刷は、e-Platchに異常音検知のメニューを追加した。

* 2022年6月20日付、凸版印刷のニュースリリース

 e-Platchは、データの伝送に次世代LPWA(低消費電力広域ネットワーク)の「ZETA」を利用する。ZETA通信は、配線や電源の確保が難しい場所でも、電池駆動タイプの中継器を置けば死角のない無線通信ネットワークを構築できる。加えて、収音センサーに付属する収音マイクは防水仕様のため、工場の屋上や地下の入り組んだ場所でも使える。

 e-Platchはもともと、温度や照度のように容量が数~数十バイトのデータを想定してZETAを採用しているが、容量の大きな音データはZETA通信では取り扱いにくいとされる。そこで同社は、回路設計技術や、クラウドサービス事業におけるデータ加工のノウハウを駆使して、ZETA通信環境下でも音データを効率的に取り扱えるようにしたという。測定器から出力されたデータを変換器「ZETABOX」でデジタル化してネットワークに転送するので、既存の測定器を流用できる。