シミュレーション・ツールの米Ansys(アンシス)の日本法人アンシス・ジャパンは2023年3月15日、防衛分野でのシミュレーション事業を日本国内でも強化していると明らかにした。防衛・セキュリティー関連の展示会「DSEI Japan 2023」(2023年3月15~17日、幕張メッセ)に出展するのに合わせて、アンシスで同事業を担当する航空宇宙・防衛部門CTO(最高技術責任者)で元米空軍准将のSteve Bleymaier氏が説明した。「半導体チップレベルからミッションに至るまでの異なったレベルでシミュレーションが可能である点を強調したい」(Bleymaier氏)としている。
Bleymaier氏によれば、米国では防衛装備の開発に要する期間が長くなっており、新技術を装備に応用するスピードで後れを取っているという。「例えばF-35戦闘機は、コンセプトを決める段階から初期作戦能力を確立するまでに27年もかかった。現在米国で装備の開発期間は平均16年であるのに、中国は7年より短い」(同氏)。この課題の対応にデジタル技術の活用が急務になっているという。
アンシスは2020年1月に航空宇宙・防衛関連ソフトの米Analytical Graphics(AGI)を買収した。AGIはミッションレベル、すなわち装備の運用時に目的通りの成果を得られるかをコンピューターでモデリング・シミュレーションする技術を持ち、例えば人工衛星の運用に関する課題解決などを支援していた企業。粒度は粗くても全体をふかんするシミュレーションと、アンシスが従来手掛けてきた物理現象や部品レベルのシミュレーションを組み合わせる目的だ。
ミッションレベルのシミュレーションは、さまざまな装備を組み合わせた運用も想定しており、個々の兵器や装備といったハードウエアやシステムのソフトウエアよりも広い範囲をカバーする(図)。装備品の調達に当たっても、個別に細かな仕様での指定や検査よりも「(シミュレーションなどの方法で)ミッションの中で役割を遂行できるとメーカーが示し、防衛当局が検証するような方向に変わりつつある」(アンシス・ジャパンArea Vice Presidentカントリーマネージャーの大谷修造氏)と説明している。