帝人は2023年3月、燃料電池の稼働に必要な機材を一体化にした燃料電池ユニットと、同ユニットに水素を供給する圧力容器ユニットを開発したことを発表した。東急建設が進める渋谷駅周辺開発の建設工事現場で、2023年6月から燃料電池に関する実証実験を実施。各ユニットを実環境下において検証する。その後、検証結果を踏まえて2024年春ごろの販売開始を目指す。
燃料電池を使用するためには、一般的に、電池や制御装置を組み合わせた発電機システムを構築する必要がある。既存の発電機システムではサイズや重量が大きく、運搬時には重機が必要で、実用面では多くの課題があるという。
併せて、水素を貯蔵するタンクは、発電機システムと安全な距離を保ちながら運搬、設置しなければならない。併せて、タンクを使用する作業員の工数が多くなるなど、運用の難しさが課題となっていた。
そこで開発した燃料電池ユニットは、燃料電池の稼働に必要な機材を一体化した可搬型の発電システムだ。具体的には燃料電池のほかに、電池やインバーター、コンバーターを搭載する。「必要な機能や出力を絞って小型化することで、運んで使えるようにした」(同社マテリアル新事業部スマート&セーフティ事業推進班 近常哲也氏)という。
燃料電池には、英Intelligent Energy(以下、IE)の「IE-LIFT 1T」を搭載し、小型・軽量化を図った。帝人はIEが開発した燃料電池の代理店販売をしている。燃料電池の最大出力は1200Wとなる。
ユニットの連続定格出力は、700~800W、最大出力は1500Wとなる。電池容量は1kWhで、機器トラブルや水素タンクの残量不足などで燃料電池が停止した場合でも、定格出力で約1時間の稼働が可能だ。
圧力容器ユニットは、水素タンクを3本搭載する可搬型の水素燃料供給装置だ。タンクには、帝人エンジニアリングの複合材料容器「ウルトレッサ」を採用する。ウルトレッサには炭素繊維が使用されており、耐圧性を保ちながら軽量化しているのが特徴だ。これにより、同ユニットの運搬時における作業員の負荷を軽減する。
タンクには高圧の水素を充填している。同ユニットの減圧装置により、バルブ操作のみで圧力を降圧し、燃料電池ユニットへ水素を供給するため、安全性は確保しているとした。
用途としては、「ガソリン発電機からの置き換えを想定している」(同氏)という。工事現場や屋外イベントなど電気の通っていない場所で使用できるとした。