豊田自動織機は2023年3月17日、同社製の国内向けフォークリフト用エンジンについて、排ガスに関する劣化耐久試験の手順や方法が法規に違反し、一部機種では実際に規制値を超過していたとして、これらのエンジンを搭載したフォークリフトの国内出荷を停止したと発表した。対象となるエンジンはディーゼルエンジンの「1ZS型」「1KD型」と、ガソリンエンジンの「4Y型」。出荷を停止するフォークリフトの生産規模は月産約1400台。
既に出荷して稼働中のフォークリフトについては「今後リコールなどの措置が確定し次第、速やかに対応を進める」(同社)としている。その連絡があるまで、ユーザーは特に対応する必要はないという。
実測値でなく推定値を使用
同社は2021年5月から北米向けガソリンエンジンの認証について不正の可能性があるとして外部弁護士による調査を開始し、2022年1月には調査範囲を国内向けに拡大。2022年4月からはディーゼルエンジンについても調査を始めた。これらの調査により、具体的な不正行為が判明したとしている。
ディーゼルエンジンでは、劣化耐久試験中に排ガスのPM(粒子状物質)値が高くなったため、燃料噴射装置を改良したが、その後試験をやり直さず、改良品を装着した場合の推定値を試験結果とした。現実の製品でも経年劣化によりPM値の超過が生じる。さらに、試験に求められるエンジン運転条件を、本来は設備(試験ベンチ)によって成立させるべきところを、エンジンの制御ソフトの一部変更により実現した。その理由は、試験ベンチの仕様上困難だったためとしている。
1KD型は建設機械用としても外販しており、フォークリフト用とは別の国内認証を取得している。しかし、試験時のエンジン運転条件についてフォークリフト用と同様の違反があり、出荷を停止した。
ガソリンエンジンでは、劣化耐久試験中に排ガスのNOx値が高くなったため、燃焼状態を測定する酸素センサーの影響を確認する目的で、一時的に仕様の異なるセンサーへ交換。その状態でNOx値を測定し、試験を継続した。さらに、排ガス成分実測値の一部を異常値として採用せず、同機種の別の耐久試験で得た測定値を流用した。
2021年度の実績では、フォークリフトの国内販売台数4万4900台のうちエンジン車は1万7400台。このうち出荷停止の対象機種は1万6500台で、内訳はディーゼル9400台、ガソリン7100台。出荷停止対象機種の売上高は合計約420億円になる。2023年2月末までの累計では、対象機種の販売台数はディーゼルが7万1300台、ガソリンが8万8300台だった。
同社は出荷停止するフォークリフトについて「関係省庁の指導を受けながら、出荷を再開できるよう努める」と説明。ユーザーが使用中のフォークリフトはメンテナンスサービスなどにより「稼働への影響を最小限に留めるよう注力」(同社)としている。再発防止に向けては、外部弁護士による調査とは別に、外部有識者による独立した特別調査委員会を設置し、事案内容の解明と真因の分析、再発防止策の取りまとめを進める方針。
同社役員のうち、取締役会長の豊田鐵郎氏と取締役社長の大西朗氏は月額報酬全額の6カ月分、取締役副社長の水野陽二郎氏と経営役員(エンジン事業部長)の松本洋氏は月額報酬の3割を6カ月分辞退する。