川崎重工業は大容量ニッケル水素2次電池「ギガセル」について、航空母艦からの艦載機射出に使う電磁式カタパルトへ転用できるとして、「DSEI Japan 2023」(2023年3月15~17日、幕張メッセ)にパネルで展示した。電磁式カタパルトの電源として、大電力の放電が可能な特徴を生かせると説明している。
現在運用されているカタパルトはほとんどが蒸気圧によるもので、電磁力を利用する電磁式はまだ実用例が少ないが、無人機にも向くとして開発が進んでいる。蒸気式に比べて動作中の細かい制御が容易であり、航空機の質量によらず運用できる長所がある。米海軍が1基を運用している他、中国も実用化を進めているとされる。
ギガセルの「30-K7」型モジュールは電圧が約36Vで容量は5.4kWh。電磁式カタパルト向けには300個を使い、32MWの出力を得る想定。キャビネットに並べて、格納庫のようなスペースに設置すると想定している。
ニッケル水素2次電池は電解液が水溶液であるため、リチウムイオン2次電池のように有機溶媒を使う電池に比べて火災などの危険が少ないのも空母に向く。「被弾時などに火災が広がらないようコントロールしやすい」(同社)と説明する。
ギガセルはこれまで、主に鉄道用の直流電化区間での地上蓄電設備で実績がある。地上蓄電設備は架線電圧の低下を補ったり、停電時に電車を最寄り駅まで移動させる電力を提供したり、列車がブレーキをかけた際の回生電力を受け取ったりする目的で変電所などに設置する。ギガセルのモジュールを40個直列に接続するとほぼ架線電圧の1500Vになるため、これを並列にして計80個を1カ所に設置して使われている(架線電圧が750Vの地下鉄では40個)。コンバーターを介さずに架線に直結して動作させられる。