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 大日本印刷(DNP)とダイヘン、双日は2023年3月、3社が共同開発した無線充電できる軽の商用電気自動車(EV)を使い、公道での実証実験を始めたと発表した。無線充電機能を搭載した商用EVが登録の認可を得たのは、国内で初めて。ケーブルを使わずにEVに充電できるようになれば、企業のEV運用に伴うコストや乗員への負荷を減らせる。早ければ2025年までの実用化を目指す。

実証実験用の軽商用EV
実証実験用の軽商用EV
双日が提供する軽商用EVを基に試作車を共同開発してきた。試作車の開発には3社のほか、双日の子会社である双日プラネット(東京・千代田)も参画した。2022年11月に実証実験用のEVを完成させた。(出所:DNPの配信動画を日経Automotiveがキャプチャー)
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 3社はDNPの無線充電用のシート型コイルを使い、車両側の受電用コイルと地上側の送電用コイルの設備を開発し、無線充電のシステム化に成功した。DNPの同コイルは従来技術に比べ4分の1の質量や厚さを実現しているほか、充電時にコイルの外側に磁気を帯びた空間が発生する「漏洩(ろうえい)磁界」を抑制できるという。

無線充電のシステム構成
無線充電のシステム構成
車両に元から搭載しているものは緑色、追加したものは水色と橙(だいだい)色で示している。橙色はDNP製のシート型コイルで、青色はダイヘン製の無線充電用の部品や機器。定置型の送電ユニットから充電する。走行中に道路から無線で車両に給電するシステムではない。(出所:DNP)
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DNPのシート型コイルと従来技術の比較
DNPのシート型コイルと従来技術の比較
DNPの同コイルは、厚さや質量を従来技術の4分の1に低減した。(出所:DNPの資料を基に日経Automotiveが作成)
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 同無線充電システムは、乗員が充電器と車両をケーブルで接続する必要がないため、充電作業の時間短縮を期待できる。車両の自動駐車システムと組み合わせれば、充電までの運転者の手間をさらに減らせる。ケーブルに起因するトラブルや充電器の維持費用、充電スペースの削減なども見込めるという。

無線充電の様子
無線充電の様子
実証実験用のEVの前後輪の間に搭載した受電用コイルと、地上側の送電用コイルを使って充電する。(出所:DNPの配信動画を日経Automotiveがキャプチャー)
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 カーボンニュートラル(炭素中立)の実現に向けて企業でのEV導入が進む中、充電作業によって増える労働時間の削減が課題となっている。従来の商用EVとケーブルを使う充電システムでは、充電に伴う作業時間が年間で約20~120時間以上になる可能性があるという。

 3社の軽商用EVは、2023年2月に軽自動車検査協会による改造車登録の認可を取得し、公道での走行を開始した。無線充電システムに関する現行の法規を踏まえ、まずは私有地や工場内などでの運用を想定しているという。3社は実用化に向けて業務提携し、今後は車種の拡大なども視野に取り組みを進めるとしている。