帝人フロンティア(大阪市)は、ポリウレタン(PU)弾性繊維を含むポリエステル製の衣料品からPU弾性繊維を除去し、ポリエステルを効率的に抽出する技術を開発した。2023年4月10日に発表した。今後、この異素材除去技術を活用したリサイクル工程の構築に取り組み、回収した衣料品を原料樹脂に戻して再び繊維を造る「繊維to繊維」(同社)の早期実現を目指す。

 今回の技術開発に当たり同社は、PU弾性繊維を膨潤させて化学結合を切断し、溶解させる処理剤を探索。さらに「さまざまな処理条件を工夫」(同社)し、ポリエステル繊維に影響を与えずPU弾性繊維のみを除去できる技術を確立した。こうして処理した衣料品は、ポリエステル素材のみの衣料を対象としていた既存のリサイクル工程に投入できる(図1)。

図1 新たな異素材除去技術による回収衣料のリサイクル工程
図1 新たな異素材除去技術による回収衣料のリサイクル工程
PU弾性繊維を含むポリエステル製の衣料品は、従来工程ではPUの影響で品質が劣化してリサイクルできなかった(上)。新たな異素材除去技術で前処理することで、ポリエステル繊維のみを抽出して既存のリサイクル工程に投入できる(下)。(出所:帝人フロンティア)
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 同社によると、近年、衣料品市場では速乾性や防シワ性、着用快適性といった衣料品の高機能化への需要が高まり、ポリエステル繊維とPU弾性繊維を組み合わせたストレッチ性を有する衣料品が増加しているという(図2)。「従来はPU弾性繊維を除去する技術が無かった」(同社)ため、そうした衣料品から再び樹脂原料を得るケミカルリサイクルは難しかった。

図2 PU弾性繊維を含むポリエステル製のジャケット
図2 PU弾性繊維を含むポリエステル製のジャケット
PUを8%含んでいる。伸縮性が高く、楽に体を動かせる。(写真:日経クロステック)
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