信越化学工業は、車載向け高圧ケーブルの被覆材に使う成形用シリコーンゴム「KE-5641-U」を開発し、サンプル出荷を始めた。従来の被覆材に比べケーブルの柔軟性を高め、質量を軽くできる。電気自動車(EV)など電動車両における駆動システムの高電圧化を商機に拡販を目指す。

EVに使う高圧ケーブル
EVに使う高圧ケーブル
駆動システムの高電圧化に伴い、高い耐電圧特性が求められている。(写真:信越化学)
[画像のクリックで拡大表示]

 同シリコーンゴムは業界最高水準の耐電圧特性を実現したとする。絶縁破壊の強さは40kV/mmで、同社の従来品(シリコーンゴム製)に比べ約54%高めた。高い耐電圧特性を持つため、高圧ケーブルの被覆層を薄くしても絶縁性能を確保でき、ケーブルの柔軟性向上や細径化、軽量化につながるとする。

 EVやハイブリッド車(HEV)といった電動車両では駆動システムの高電圧化や大電流化が進んでおり、高圧ケーブルには高い耐電圧特性が要求される。従来の被覆材では絶縁性能を確保しようとすると被覆層が厚くなり、柔軟性が失われるのが課題だった。自動車メーカーは配線作業のしやすさのため、柔軟性に優れた高圧ケーブルを求めているという。

EVにおける高圧ケーブルの配線イメージ
EVにおける高圧ケーブルの配線イメージ
配線作業をしやすくするため、同ケーブルには高い柔軟性が求められている。(写真:信越化学)
[画像のクリックで拡大表示]

 信越化学は「すでに自動車メーカーへのサンプル出荷を始めているが、量産の時期は未定」(同社広報)としている。なお、車載だけでなく、産業機械や鉄道設備、エネルギープラントといった用途で使う高圧ケーブルの被覆材としても使用できるという。