日立建機と物質・材料研究機構(NIMS)は、レーザー焼き入れによって使用済みの歯車を修復する手法を開発した()。修復した歯車の使用寿命は、新品と同等以上に延長できることを実証したとしている。日立建機は2023年4月から、使用済み油圧ポンプ内部の歯車の再生に同手法を採用する。

図 使用済み歯車にレーザー焼き入れを施して損傷部分を修復する様子
図 使用済み歯車にレーザー焼き入れを施して損傷部分を修復する様子
(出所:日立建機)
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* 日立建機のニュースリリース

 新開発の手法は、浸炭処理で表面を強化した歯車で、長期間の使用に伴う摩擦や残留応力などによって損傷したものを対象とする。表面にレーザーを照射し、損傷部分の表層組織を部分的に改質して強度を回復させる。

* 浸炭処理 炭素を拡散させて金属の表面を強化する処理。

 同手法の適用により、歯車の再生利用率が約25%向上するという。同社の試算では、20tクラスの油圧ショベルで定期的な部品交換の際に再生された歯車を使用すると、新品部品の製造時に発生していた二酸化炭素(CO2)を1台当たり約13kg減らせる。

 日立建機の再生事業では、機械の修理・定期交換時に油圧シリンダーや油圧ポンプ、走行装置などの使用済み純正部品を回収し、分解・整備した上で新品同等の機能保証付き再生部品として提供している。こうした事業の一環として、鉱山機械の再生部品への新手法の適用や、部品再生を手掛ける日立建機グループの海外拠点への導入も計画している。

 新手法は、日立建機の部品・サービスビジネスユニット再生事業部とNIMSの構造材料研究センター極低温疲労グループが共同で開発した。両者は、2019年から取り組んできたX線測定による歯車の再利用可否の判定手法の開発に続き、翌2020年から今回の再生手法の開発にも取り組んでいた。

* 2021年5月20日付、日立建機のニュースリリース