三菱ケミカルグループは2023年5月12日、2023年3月期(2022年度)の決算について売上収益が前年度比16.5%増で過去最高の約4兆6345億円になったと発表した。営業利益は同39.7%減の約1827億円だった(図)。「2022年度はウクライナ危機によるエネルギーコストの上昇、中国での需要低迷、世界的インフレなどが重なり、特に後半の6カ月は化学産業にとってここ30年で最悪の状況だった」(三菱ケミカルグループ代表執行役社長のジョンマーク・ギルソン氏)という。「製品価格への転嫁、海外での売り上げと利益の増加、期初の予定を上回る約500億円のコスト削減、不採算事業からの撤退によるコスト削減などを進められた」と2022年度を振り返った。
同社の事業分野のうち、フィルムや材料を扱う「機能商品」セグメントについては、原料価格上昇分の製品価格への転嫁が進行したが、自動車向けのポリカーボネート(PC)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)やコーティング材料の需要が低迷し、ディスプレー向けの光学フィルムは需要が大きく落ち込んだため、減益になった。
化学品を扱う「ケミカルズ」セグメントでは、アクリル(PMMA)のMMA(メタクリル酸メチル)モノマー、PCやエポキシ樹脂の合成に使うビスフェノールA(BPA)、炭素材料やコークスの需要と市況の低迷し、原材料価格の上昇が重なって利益が減った。
ただし「産業ガス」セグメントでは価格転嫁の進行、DX(デジタルトランスフォーメーション)などによるコスト削減に加え、需要が堅調だったことから増益。「ヘルスケア」セグメントでは、多発性硬化症治療剤「ジレニア」のロイヤルティー受け取りに関する係争について、仲裁判断が三菱ケミカル側を支持する結果となり、これまで決算に入れていなかった1259億円の収入を計上した。
これらにより、コア営業利益は前年比20%増加して3256億円になった。しかし、英キャッセル工場のMMA工場閉鎖や、バイオ医薬品を手掛けていたカナダMedicago(メディカゴ)の事業撤退による清算などの減損により、営業利益、税引き前利益、親会社の所有者に帰属する当期利益はいずれも減益になった。
2023年度以降「世界の経済状況は数年かけて正常化すると見ている」(ギルソン氏)。2024年3月期(2023年度)の業績予想については、売上収益は2022年度から微減となる約4兆5550億円と見込んでおり、コストダウンの取り組みと併せて、約2500億円のコア営業利益が得られるとしている。