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 小中高校などの学校現場での生成AI活用について、文部科学省は夏前にもガイドラインを公表する。2023年5月16日、文部科学大臣の諮問機関である中央教育審議会(中教審)の初等中等教育分科会に設けたデジタル学習基盤特別委員会が内容の検討を始めた。

生成AIの学校現場での利用に関する今後の対応
生成AIの学校現場での利用に関する今後の対応
(出所:文部科学省)
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 16日に開かれたデジタル学習基盤特別委員会の第1回会合ではGIGAスクール構想の現状について文科省が説明したほか、2025年度以降の学校における新たなICT環境整備方針の策定に向けたワーキンググループの設置、生成AIの学校現場での取り扱いに関する今後の対応について議論された。

 生成AIについて、文科省が「批判的思考力や創造性への影響、個人情報や著作権保護の観点などについて、リスクの整理が必要」と説明する一方、学習指導要領では「学習の基盤となる資質・能力として情報活用能力を位置づけている。新たな技術である生成AIをどのように使いこなすのかという視点や自分の考えを形成するのに生かすといった視点も重要」との観点が示された。

 各委員は「禁止はありえない」との見解で一致しており、そのうえで「生成AIへの対応は今後出てくる技術にどう対応するかの試金石。パイロット校で可能な使い方をすべて試し、得られた事実を共有し分析するといったことも必要」(奈須正裕上智大学総合人間科学部教授)、「(生成AIがつくったものについて)フェイクデータを引用する可能性がある点は明確に示す必要がある」(梅嶋真樹慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科特任准教授)などの意見が出された。

 デジタル学習基盤特別委員会での議論や政府全体の議論を踏まえたうえで、文科省は夏前をめどに、「生成AIについての説明」「情報活用能力との関係」「年齢制限や著作権、個人情報の扱い」「活用が考えられる場面で、禁止すべきだと考えられる場面」「授業デザインのアイデア」などをまとめたガイドラインを公表する。

 デジタル学習基盤特別委員会は、生成AIといった特定の技術だけでなく、広くデジタル学習基盤の整備や充実、それらを活用した教育のデジタル化の推進について調査審議を行うために設置されたもの。同委員会の委員長を務める堀田龍也東北大学大学院情報科学研究科教授/東京学芸大学大学院教育学研究科教授は「デジタルの学習基盤はこれからの教育を考えるうえで不可欠。これからの教育のあり方に向けて各論で議論するだけでは足りない。中教審のなかにしっかりと総論を議論するような特別委員会をつくることになった」と説明する。ICT環境の整備や活用、情報活用能力の育成など様々な問題があるなかで、同教授は「それを総論として中教審の初等中等教員分科会にあげていくのが(同委員会の)役目」と話す。